医療観察法病棟
1. 医療観察法とは
「医療観察法」の正式名称は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」です。平成15年7月に成立し、平成17年7月に施行されました。医療観察法では、
- 入院や通院、退院などを適切に決定する手続き
- 手厚い専門的な医療
- 地域社会における必要な医療やケアを提供する仕組み
などについて定めています。
2. 医療観察法の目的
不幸にして精神障害のために他害行為を行ない責任能力がないとされた者に対し、裁判所の指示により 法律に沿って治療と処遇を実施し、安心で安全な社会復帰を促進することが目的です。
3. 医療観察法の治療理念
医療観察法の入院処遇ガイドラインに示される「ノーマライゼーションの観点も踏まえた対象者の早期実現、標準化された臨床データの蓄積に基づく多職種のチームによる医療提供、プライバシー等の人権に配慮しつつ透明性の高い医療の提供」を遵守し、久里浜医療センターの医療観察法病棟では、対象者中心の医療を実践し、人間性の回復を援助し、地域社会で共生できることに尽力していきます。
4. 医療観察法病棟 (しおさい病棟・なぎさ病棟)
久里浜医療センターは国により指定を受けた指定入院医療機関であり、医療観察法に基づき、入院医療の提供を行う専門病棟です。
自然の光や風を取り込むなどのアメニティーを確保する一方、玄関は電気錠による二重扉構造とするほか、24時間体制の警備員を配置するなど、国のガイドラインに基づいた高い安全管理とセキュリティ対策を採っています。病室は全て個室で、対象者のプライバシーに配慮した病棟構造になっています。
5. 多職種チーム医療
医師や看護師、臨床心理技術者、精神保健福祉士、作業療法士からなる多職種チームによって、対象者の社会復帰実現を目指した各種治療プログラムを実施しています。
対象者自らが病気を理解し、症状への対処能力を会得したり、退院後の生活に必要な技術や能力 (対人関係、援助の求め方、金銭管理や調理など) を身につけるために、多様なリハビリテーションプログラムを対象者も参加しながら作り上げます。
6. 治療期間
裁判所により入院処遇の決定を受けた対象者の治療に当たります。 急性期・回復期・社会復帰期と治療ステ―ジに合わせた多様な治療を提供しています。
標準的な入院期間は18ヶ月以内とされていますが、病気の状態や対象者の社会復帰の準備に合わせて入院期間は個別に設定されます。治療の継続や退院の決定は全て、地方裁判所において、裁判官と精神保健審判員 (精神科医) の審判で決定されています。
7. 地域連携
久里浜医療センターの医療観察法病棟では、医療観察法の対象となった方々の自律と人間性の回復を目指し、対象者、家族、地域、病院などが共に手を取り合いながら歩んで行くことを目指しています。
入院当初から退院に向けて、関係機関との十分な連携を行うことで、退院後の継続的な医療とケアへつなげていきます。
保護観察所の社会復帰調整官と協力しながら、都道府県、市町村といった各自治体、精神保健福祉の関係機関との連携により、総合的で専門的な医療保健康福祉サービスを提供し、地域ケアチームの一員として入院対象者の社会復帰を支援します。
8. 各種会議
治療評価会議や運営会議を行い、多角的な評価を行い、診療の質を高めています。また、外部委員を交えた倫理会議や外部評価会議を開催し、診療の透明性を高めています。
9. 久里浜医療センターの司法精神医学への役割
医療観察法に基づいて、当院は52床 (全国で2位) の指定入院医療機関として運営しています。科学的根拠に基づいた先進的な医療を提供します。
また、臨床的な研究や研修を行ない司法精神医学の発展に寄与したいと願っています。包括的な司法精神医療への寄与を目指し、各種精神鑑定も積極的に行っています。医療観察法での診療経験を生かして、新しい治療技術や治療体制の開発など司法精神医学だけでなく、精神医療全般の発展に貢献することを願っています。