インターネット依存治療部門 (TIAR)

10.情報ボックス

1) インターネットについて

インターネットは、世界中のコンピュータなどの情報機器を接続するネットワークである。1990年ごろから、世界的に広く使われ始め、近年目覚しく進展し、現在では、私たちの生活や仕事などさまざまな場面で使われる、不可欠な社会基盤となっている。
インターネットを利用するためには、サービスプロバイダと契約することによって、インターネットに接続できるようになる。また、携帯電話会社と契約し、携帯電話回線を通じて利用することもできる。
複数のコンピュータを、ケーブルや無線などを使ってつなぎ、お互いに情報をやりとりできるようにした仕組みをネットワークと呼ぶ。インターネットは、家や会社、学校などの単位ごとに作られた1つ1つのネットワークが、さらに外のネットワークともつながる、世界規模のネットワークである。インターネットでは、コンピュータ同士が通信を行うために、TCP/IPという標準化されたプロトコル(情報をやりとりする際の共通の言語)が使われている。この仕組みにより、インターネット上では、機種の違いを超えて、さまざまなコンピュータが通信を行うことができるようになっている。
ネットワーク上で、情報やサービスを他のコンピュータに提供するコンピュータをサーバ、サーバから提供された情報やサービスを利用するコンピュータをクライアントと呼ぶ。パソコンや携帯電話、スマートフォンなどは、クライアントにあたる。インターネット上には、メールサーバやWebサーバといった、役割の異なる多数のサーバが設置されており、それらのサーバが、クライアントからの要求に従って、情報を別のサーバに送ったり、持っている情報をクライアントに渡したりすることで、電子メールを送信したり、ホームページを見たりすることができるようになる。

文献
総務省. 国民のための情報セキュリティサイト.

2) ゲームについて

日本における家庭用電子ゲームの歴史は1975年に対戦型テニスゲームが発売されたことがその嚆矢である。その後も家庭用電子ゲームの発売は続いたが大きな流行にはならなかった。1978年に業務用電子ゲームとしてのシューティングゲームやアクションゲームがゲームセンターや喫茶店などに出現し、一大ブームを巻き起こし、これによって一時は電子ゲームの主な使用場所は家庭からゲームセンター等の遊技場等に移っていった。しかし1983年に取り扱いが極めて簡単であり比較的安価な家庭用ゲーム専用ハードが発売されたことにより以降は日本の家庭用電子ゲームは隆盛の一途を辿ることとなった。現在に至るまでシリーズとして発売され続けているような名作RPG(ロールプレイングゲーム)やアクションゲームのソフトが1986年頃から発売されるようになり、そのソフトを求めて販売前から玩具店に徹夜で並ぶ列が出来るなどの社会現象を巻き起こした。その他にも多くの家庭用電子ゲームが発売され、多くの子供達だけでなく大人もが没頭するようになった。ただし当時はインターネットを介したゲームは日本では殆ど広まっておらず、一部のパソコンユーザーが使用しているのみであった。このような状態は1995年頃から各家庭にパソコンが導入され始めた後もしばらくは大きく変わることはなかった。また家庭用電子ゲーム機器の中でも携帯用電子ゲーム機器は1989年頃から本格的に販売されるようになり、とりわけ1996年頃から子供向けの人気RPGシリーズのソフトが発売されたことにより大幅に売り上げを伸ばすこととなった。このように日本において家庭用電子ゲーム機器はその後も順調な発展を続けていたが、当時はゲーム依存が殆ど社会的に問題とされることはなかった。理由としてはオンライン仕様ではなかった当時のゲームはクリアするまでに要する時間が有限だったからである。RPGはどのようなシリーズであってもクリアまでに要する時間は合計100時間を超えることは通常なく、一度クリアしてしまえばそれ以上にやり込むことも稀だったからである。このような状態が変化したのは2000年度以降から家庭用PCが廉価で販売されるようになったこと、各家庭で高速高容量のインターネット回線が利用出来るようになったこと、そして2009年にスマートフォンが発売されるようになったことの影響が大きいと考えられる。Internetを介して手軽にオンラインでゲームが出来るようになり、それは終わりのないオンラインの世界への没頭を容易にした。この10年間で家庭用電子ゲーム機器、同ソフトの売り上げはやや減少傾向にあるが、その一方でオンラインゲームの売り上げは5倍近く伸びている。今やその売り上げは1兆3000億円にも達しており、これは家庭用電子ゲーム機器、同ソフトの売り上げの4倍にもなっている。¹⁾

文献
角川アスキー総合研究所. ファミ通ゲーム白書, 2020.

 

3) ゲームの依存性

ゲーム、特にネットに接続されているオンラインゲームに依存性があるのは何故であろうか。それはゲームそのものの仕組みとプレイヤーと他のゲーマーとの人間関係の二つの要素が原因となる。
ゲーム側の仕組みとしては、まずは無料から始められる、ログインボーナスや通知が来てゲームに誘われる、レアなアイテムをゲットできる、ゲームが定期的にアップデートされて終わりがない、などがある。また、ゲーム内で役割があることで自分だけ抜けることはできない、クエスト等をクリアしていく達成感、他のゲーマーが認めてくれる自己評価の向上、など、ゲームを通じて自分が活躍することで、リアルの生活では味わえない充実感や達成感を体験ができる。ゲームの世界ではゲームに対して同じ様な興味を持った仲間が集まるため、人間関係がより強化されやすく、ゲーム内でのランキングは、ゲームの競争をあおる。一度ゲームに依存してしまうと、現実世界での活動に興味を失い、ゲームの中で自己実現や自己評価をするようになる。
もちろん、依存には脳内の機能変化が関係している。ゲームは上記のような、ワクワク感や多幸感を生み出す。そこには、脳の深部に存在する脳内報酬系が関わっている。ゲームを繰り返して行うと、この報酬系が絶えず刺激され、やがて、ゲーム刺激に対するこの系の反応は下がってゆく。この状態を、報酬欠乏状態とよぶ。ゲームに依存している場合、この反応低下を補うために、ゲームに益々拍車がかかる。また、私たちの脳には理性をつかさどる前頭前野と呼ばれる部位がある。ゲーム依存が進行していくと、この脳の働きが下がり、ゲームの歯止めがきかなくなり、依存が重症化する。これらを例にとってみてもゲーム障害は単なるゲームのし過ぎではなく、脳の働きに変化を伴う依存という疾病であるといえる。
一般に、思春期の若者の前頭前野の機能は、年齢とともに向上する。当センター外来を受診されるゲーム依存患者の場合、小学生・中学生に比べて、高校生やそれより年齢が高い者の方が、ゲームをコントロールする力が上がっているように見える。これには、様々な要因が関係しているが、既述の理性の脳の成熟もその要因の一つと推測される。
文献
1) Fauth-Bühler M et al. Addict Behav, 2017.
2) 樋口 進. Q&Aでわかる子どものネット依存とゲーム障害, 少年写真新聞社, 東京, 2019.
3) King D et al. Internet Gaming Disorder, Academic Press (樋口 進監訳. ゲーム障害. 福村出版, 東京, 2020).

 

4) SNSについて

SNSはソーシャルネットワーキングサービスまたはサイト(Social Networking Services or Sites)の略である。SNSはインターネットを介して他者と繋がることのできるツールで、自分のプロフィールを公開する、友人とメッセージをやりとりする、共通の趣味を持つ新しい友人を探す、写真や動画を共有する、日記や写真を見てコメントや「イイね」をつけるなど、たくさんの利用方法がある。スマートフォンやタブレットの普及に伴い、幅広い年代がSNSを活用するようになっただけでなく、企業や政府機関も利用している。 以下に代表的なSNSと、総務省が各年代(10代~60代)別に調査した、令和元年度におけるそれぞれの利用率を紹介していく。

LINE

1対1のやり取りや複数のグループでやり取りができる。相手がメッセージを読んだ場合「既読」と表示されるのが特徴である。学校ではLINEのID交換が友達になる儀式にもなっている。スマホで撮影した画像や動画も送ることができ、現在ではメールに変わる連絡手段として、広く普及している。10代~60代全体で86.9%で、特に20代が95.7%、30代が94.9%、10代が94.4%と利用率が高い1)。日本では代表的なSNSの一つと言える。

Twitter (ツイッター)

Twitterは「世界で今起きていること、人々が話していることをリアルタイムで映し出します」をテーマに140文字の短文を通して、今考えていることをつぶやくことで全世界に情報を発信できるSNSである。Twitterを利用するだけで最新のトレンドや、世の中で今起きている情報を得ることができ、災害時や、電車の遅延情報などでも利用されることが多い。自分の考えや、気持ちを気軽につぶやけることから、とても身近なSNSではあるが、長時間使用しやすい、誹謗中傷や攻撃的なつぶやきが自殺に発展してしまうなど、社会問題になっている。10代~60代全体の利用率は38.7%で、特に20代は69.7%、10代は69.0%と高くなっている1)。

Instagram (インスタグラム)

インスタグラムは、スマホ等で撮影した写真を画像編集を加えて投稿・共有することができるSNSの一つである。インスタグラムは「インスタント(即時)」と「テレグラム(電報)」を組み合わせた造語と言われている。見栄えが良い、おしゃれ、かっこいい、などの写真には、たくさんの「いいね!」がもらえたり、フォロワーが増えることもあるため、「インスタ映え」な写真と言われる。最近では、インスタグラムに多くのフォロワーのいる人を「インフルエンサー」と呼び、企業などからも、強い影響力が持っている人、と注目されている。気軽写真を投稿できるなどのメリットもあれば、個人情報が漏洩することがあるなど、注意する必要がある。10代~60代全体の利用率は37.8%で、特に20代が64.0%、10代が63.4%と多くなっている1)。また、男性より女性の方が利用者が多い。

TikTok (ティックトック)

TikTokはスマートフォン向けの動画共有サービスで、15秒のショート動画を投稿できる。撮影した動画を編集しオリジナル動画を作成することも可能である。15秒という短い動画のため、手軽に投稿できる一方で、思いがけず動画が拡散するなどの注意点もみられる。10代~60代全体の利用率は12.5%で、10代が47.9%、20代が20.4%と高く1)、特に若い世代に人気のSNSと言える。

Facebook (フェイスブック)

Facebookは、実名登録制のSNSで、自分のプロフィールや、写真、動画を公開することができる。また、友達を検索することもでき、同じ趣味や興味を持っている人と交流することも可能である。このように実名登録が可能なために、よりコミュニティが形成しやすい点がある一方で、個人情報の扱いには注意が必要である。10代~60代全体の利用率は32.7%で、特に30代が48.2%、20代が39.3%、40代が35.9%と高くなっている1)。

その他

今回挙げたのは、2020年現在代表的に利用されているSNSで、他にも用途によって、様々なSNSが活用されている。また、数年前に多くの人が利用していたSNSのサービスが、その後使われなくなることもよく見られることである。今後も様々なSNSが新たに開発され、これからも我々の生活を便利にし、世界中の多くの人たちを魅了し続けていくと思われる。しかし一方で、個人情報の問題、いじめ、誹謗中傷や人種差別など多くの課題にも直面しており、便利なツールを使う側である我々がそれぞれのメリットデメリットを理解し使用する必要がある。

文献
総務省情報通通信政策研究所 「令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 <概要>」令和2年9月

https://www.soumu.go.jp/main_content/000708015.pdf 2020年12月6日アクセス

 

5) その他過剰使用しやすいアプリケーション

様々なアプリケーション(以下アプリ)の登場により私達は多くの恩恵を受けてきた。一方で、過剰使用により生活リズムや体調を崩し、勉学や業務など日常生活に影響を及ぼすケースも見られる。動画視聴アプリを利用する学生の割合は年々増加している。またオンラインゲームの合間、もしくは同時に下記のようなアプリを過剰使用するケースも多い。
 これら以外にもデジタル技術の進歩により、多種多様のアプリが生み出されていくことであろう。

a) ブラウザアプリ

各種ホームページを閲覧するために必要なアプリをブラウザアプリという。行政機関や企業、個人が趣味で作成したホームページなどがあり、有益な情報が取得可能だが、閲覧に多くの時間を割いてしまうことがある。

b) 電子メールアプリ

インターネット上でメッセージをやりとりすることを目的としたアプリである。ワープロ文書や写真、動画を添付することも可能である。オンラインゲームやSNSなどを利用する際、メールアドレスの登録が必要になる。

c) 電子掲示板アプリ(Bulletin Board System)

インターネット上に記事を書き込み、閲覧、書き込まれた記事にコメントを付与できるアプリ。「掲示板」や「BBS」と略して呼ばれる。年齢や性別、地域を問わず共通の話題でやりとり可能だが、多くの時間を割いてしまう傾向がある。また利用者同士の意見が合わず、誹謗中種からトラブルに発展することも間々見られる。5ちゃんねる掲示板やヤフー知恵袋などが代表的である。

d) チャットアプリ

インターネット上で他者とリアルタイムで短文のコメントをやりとりするためのアプリ。近年では、音声でやりとりするボイスチャットや映像を用いるライブチャットも一般的。オンラインゲームの合間にゲーム仲間とやりとりする際にも用いられる。やりとりに夢中になり、多くの時間を割いてしまうことがある。

e) ブログ

インターネット上の日記。掲示板同様、コメントの付与が可能。日常の出来事以外にもオンラインゲーム上の出来事を綴るものや、ゲーム攻略ブログもある。閲覧やコメントの付与などに多くの時間を割いてしまうことがある。

f) 動画視聴アプリ

ネット上で動画の投稿や閲覧ができるアプリ。YouTube(ユーチューブ)が代表的。動画クリエイターが作成したものやゲーム実況など様々な動画を楽しむことができる。動画に対してコメントの付与も可能。視聴している動画に関連したおすすめ動画の案内があり、多くの時間が割かれる傾向がある。

g) 電子書籍アプリ

ネット上で閲覧可能なデータになっている一般書籍などを楽しむためのアプリ。漫画、雑誌、写真集など多岐に及ぶ。視聴に多くの時間を費やす傾向がある。

h) オークションなどを含むショッピングアプリ

企業や個人から商品を購入するためのアプリ。商品の検索などの多くの時間が割かれることがある。オークションの場合は、他者と競合するため頻回にアプリをチェックする必要がある。

i) 成人向けアプリ

動画や画像を閲覧できるものや出会い系などがある。年齢制限を設けているものもあるが、実際には中高生でも閲覧が可能。架空請求につながることもある。

文献

  1. 樋口進 Q&Aでわかる子どものネット依存とゲーム障害. 少年写真新聞社, 東京, 2019.
  2. 内閣府 令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査: 調査結果(速報)

https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r01/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf
2021年8月31日(アクセス)

 

6) スマートフォン(スマホ)について

1979年第1世代となる最初の移動通信システムが日本で商用化されて以降、40年あまりの間に移動通信システムは大きな進化・発展を遂げた。約10年スパンで規格が変更され、通信品質の向上、通信の高速大容量化、サービスの多機能化、通信料金の低廉化、利用範囲の拡大とともに、利用者の利便性が飛躍的に向上してきた。
1979年日本電信電話公社(当時)が民間用として世界で初めてセルラー方式による自動車電話サービス(第1世代移動通信システム:1G)を開始した。1985年車外でも通話可能な肩掛け型端末(ショルダーホン)が登場、1987年さらに小型・軽量化した端末を用いた「携帯電話」サービスをNTTが開始、1991年超小型携帯電話「mova」が登場した。1Gのサービスは主に音声通話で、アナログ変調方式で音声を電波に乗せて送信していた。
1993年アナログからデジタル方式による第2世代移動通信システム:2Gが開始された。2Gでは、音声通話だけでなく、データ通信サービスが本格的に開始され、1990年代広く普及していたインターネット接続サービスが提供された。また、事業者間競争により、各社が次々に新機能を端末へ搭載する多機能化へとつながった。
国・地域毎に異なる移動通信システムを導入していた2Gに代わり、「全世界で同じ端末を使えること」を目標に標準化作業が進められ、2001年NTTドコモが第3世代移動通信システム:3Gの「FOMA」を開始した。3Gと前後して、携帯電話端末の多機能化は一層進展し、2000年J-フォン(当時)が世界に先駆け携帯電話端末にカメラを搭載し、撮影した画像を電子メールに添付して送信する機能を提供した。2001年「iモード」が始まり、携帯電話端末でゲームなどの多様なコンテンツを楽しめるようになった。3Gは2Gに比べて高速大容量の通信が可能となり、本格的なマルチメディアが実現した。
2007年Appleがスマートフォン「iPhone」を発表した。スマートフォンとは、従来の携帯電話に比べてパソコンに近い性質を持った情報機器である。大きな画面でパソコン向けのWebサイトや動画を閲覧できたり、アプリケーションを追加することによって機能を自由に追加したりすることがでる。また、タッチパネルを使い、画面の拡大やスクロールなど直感的な操作が可能である。iPhoneはデザイン性、操作性、使いやすさといった革新的な端末により人気を博し、世界的に携帯電話からスマートフォンへの移行が始まった。2008年「iPhone3G」が日本ではソフトバンクにより販売開始となり、2009年Googleが開発したAndroidを搭載したスマートフォンも発売となった。2010年第4世代移動通信システム:4GがNTTドコモにより商用化され、世界標準の統一規格が実現した。4Gでは通信速度がメガからギガレベルへ進化し、大容量の動画コンテンツもストレスなく視聴することが可能となった。第三者がスマートフォン向けサービスをアプリとして開発し、配信できる仕組みが構築され、スマートフォン向けOSを提供するAppleやGoogleがプラットフォーマーとしての地位を確立することとなった。音楽や動画、ゲームといった娯楽以外にも、ユーザーの生活に根ざした様々なアプリ・サービスが開発・提供されるようになり、移動通信システムは、単なる通信基盤から生活を支える基盤となった。

参考文献

  • 総務省. 情報通信白書 (令和2年度版).

 

7) ルール作り

デジタル機器の過剰使用を避けるため、デジタル機器購入前にルールを設けることが一つの方法である。
それに当たり、両親は子どもが使用希望や所持しているデジタル機器やアプリの特徴、それらを過剰使用した結果どのような影響が生じる可能性があるか調べる必要がある。危険性がある場合は、それらを子どもと十分に共有し、ネット依存の危険性を避けるためのルールを作成したいと伝え、子どもと話し合いを行う。
 ルールの作成時、留意したいことは両親が作ったルールを一方的に押しつけないことである。できるだけ子どもに主体性を持たせ、彼らの意向を盛り込んだものが望ましい(明らかに過剰使用に至りそうな主張は、その危険性と心配である旨を伝え時間をかけて話し合いを行う)。例えば両親が一方的に使用時間を決めると1日30分など非現実的なルールになってしまい、とてもそれを実践しようという気になれない。子どもは1日2時間と主張するかもしれないが、自分の意志が尊重されたルールであれば守ろうと意識したり、それによる行動が見られるはずである。それらを目にしたら、「ルールを大事に考えてくれているよね」などと承認していく。また既に過剰使用に至っている場合には、食事はリビングで家族と一緒に摂るや十分な睡眠時間の確保など、まずは生活習慣や生活リズムを整えるためのルールを設ける視点も必要である。子どもが作ったルールを守れず生活に影響が見られるようであれば、ルールを更新したいと提案して冷静に話し合いを行う。
 ルールを設けると、それを厳守するべきだや、厳守させるべきだと考えがちだが、両親と子どもでやりとりを繰り返し、状況に応じたその時その時の最も適切なルールに更新していく話し合いの過程が重要であると考える。
 以下は家庭におけるルール作りのポイントと例である。

 

< ○○家 ネット使用に関するルール(初めてスマホを購入する場合を想定) >

(1)デジタル機器は両親が貸し与える

例)スマホは両親が購 入し、子どもに貸し与えたものである。貸し出すに際しては、一定の条件を設け、ルールに従わなかった場合は返却してもらうことがありうる。スマホを使用する際のパスワード類も両親が把握する。

(2)親子で話し合った内容を盛り込んでいく

例)1日のゲームアプリの使用時間は2時間を目安とする。他に使用するアプリはLINEのみ。他はフィルタリングやペアレントコントロールも活用し、使用しない。LINEのやりとりは午後9時30分までとする。

(3)使用する場所を盛り込む
  例)スマホは自宅ではリビングのみ使用可とする。自室では使用不可とする。充電器は両親が預かり、リビングで充電する。

(4)使用できない場面や時間帯を盛り込む

例)食事時、トイレ、学習時、入浴時、布団の中ではスマホは使用しない。21時00分以降は両親が預かる。

(5)お金の使い方について盛り込む
  例)有料ダウンロードや課金はしないや、具体的な限度額を決める。

(6)上記を守れなかった場合にどうするかを盛り込む
  例)週末に両親がスマホを預かる。

(7)ルールは書面化し張り出す
  例)ルールは書面化し、冷蔵庫に貼り出す。

(8)ルールは家族で守る
  例)ルールは子どもだけでなく、両親も守る。

(9)急を要するルール外の利用について
  例)急を要するようなルール外でスマホ利用の必要が生じた際は、両親に状況説明を行う。

(10)ルール更新について
  例)ルールの内容で生活に不便を感じた時や半年に一度ルールを見直す機会を作る。見直す際は、過剰使用で生活に影響が生じることがないよう十分考慮し話し合いを行う。

文献

  1. 樋口進. 心と体を蝕む「ネット依存」から子どもたちをどう守るのか. ミネルヴァ書房, 京都, 2017.

 

8) フィルタリングについて

フィルタリングとは、利用者が意図しないネットの危機にさらされることを防ぐアプリケーションソフトウェア(アプリ)である。ウイルス対策アプリは、「ネット機器自体」を守り、フィルタリングのアプリは「ネット機器を使用する人」を守るイメージである。例えば、アダルトサイト、ドラッグや犯罪に関するサイトといった有害情報を含んでいたり、ネット被害にあう危険性のあるサイトの閲覧、課金アプリ・有料アプリの購入などがある。

「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律79号)」に基づく省令には、スマホ購入時に事業者(携帯電話会社、格安SIM提供会社、携帯ショップ)に対して、フィルタリングを提供する義務を以下のように規定している。
・18歳未満が契約/使用する場合は、フィルタリングの導入を条件とする。
・申込時に18歳未満に有害な情報があることを説明する。
・申込時にフィルタリングの必要性や利用できるサービスの内容を説明する。

大手携帯電話キャリア、ゲーム会社、セキュリティベンダーも独自のフィルタリングサービスを提供している。単に有害サイトの閲覧防止に加え様々な総合的管理が行える。
フィルタリングサービスの総合的管理の例
・学齢別(小学生・中学生・高校生など)自動制限設定
・保護者のスマホなどからネット機器の設定変更(使用できない時間を曜日ごとに設定するな 
ど)
・利用アプリ、検索履歴チェック
・利用者の居場所確認
・ネット利用状況の確認や長時間の利用制限

保護者は、購入時に、単に設定をすれば良いというものではない。以下の点に留意しておくことが大切である。
・子どもにはフィルタリングする必要と内容を伝え、ネット依存やネットの危険性の理解を深める。
・保護者自身が、各ネット機器(ゲーム機を含む)のフィルタリング機能を知っておく。
・子どもが「フィルタリングを解除して欲しい。」と言ってきたら、制限やルールの見直しにつ  
いて丁寧に話し合う。

中でも、ルールの見直し(ルールのアップデイト)は大切である。ルールは守る、守らせないということよりも見直しについて話し合うプロセスを通じて、お互いネットの利用の必要性と相反するネット依存の危険性を学んでいくことが肝要である。

文献

  • 内閣府. インターネット環境整備法・関係法令 (https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/hourei.html) 2020年9月13日アクセス。

 

9) ネットいじめ

「ネットいじめ」とは,スマホやパソコンを通じて,インターネット上のウェブサイトの掲示板などに、特定の人の悪口や誹謗・中傷を書き込んだり、メールを送ったりするなどの方法により、いじめを行うものである。
SNS上に誹謗中傷を書かれたことが引き金となって、芸能人が自殺してしまうなどの事件が発生し、社会問題化しているが、学校現場でも以前から深刻な問題となっている。文部科学省が公表した「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると,ネットいじめの認知件数は,前年度比1590件増の17924件で,過去最多となっている。
最近では、新しいサービスやシステムの出現によって,ネットいじめの手段や方法も複雑化しているといえる。具体的には、Twitterの鍵アカウント(フォロワーのみ投稿内容がみられるアカウント)に書き込んだり、24時間で自動的に消える投稿機能に悪口を書き込んだり、被害者になりすましてSNSのアカウントを作成し、特定の人の誹謗・中傷を不特定多数の携帯に送りつけるなどである。
ネットいじめの特徴として、インターネット上で行われる行為のため、保護者や教員、周囲の者が把握できないことや、加害者が特定されにくいことによって、安易に加害行動に移しやすいこと、安易に不当的多数の人に拡散されてしまい、痕跡が消し切れなくなってしまうことなどが挙げられる。さらに、加害者は被害者の反応を直接見ることもないため、抑制が働かず、いじめがエスカレートしやすいといった特徴もある。
 対策として、文科省は「『ネット上のいじめ』に関する対応マニュアル・事例集」を作成し、学校における対応の手順や関連機関の連絡先などを掲載している。また、「子供のSOS相談窓口」を作り,24時間対応の相談窓口を設けている。さらに、法務省人権擁護局は人権相談として受け付け、法務局が当該書き込みの違法性を判断した上で、プロバイダ等へ削除要請をするなどの対応を行っている。また,予防のための取り組みとしては、SNSやスマホの利用に関するルールを設定したり、県PTA連合会が作成したカリキュラムに従って、ネットモラル講習会を実施したりといった取り組みが行われている。
 誰でもいじめの被害者にも加害者にもなる可能性がある。日頃から親子で何かあったときにすぐに相談できる関係性を作っておくことが大切である。

 

10) 課金

オンライン・ゲームで「課金」とは、本来、ゲーム運営者が利用者に料金を課すことをいいます。課金をすることで以下のようなことが得られる。
・キャラクターの魅力的な装備やパフォーマンス
・行動力回復や攻略を有利にすすめるアイテム
・ゲーム自体の自体の購入・月額のプレイ料金
・攻略時間の短縮
・コレクション欲や自己顕示欲

またバトルパスと言われるバトルすればするほど得られる報酬が大きくなったり、ストレッチゴールと言われる売り上げが伸びれば伸びるほど購入者が貰えるゲーム内アイテムが豪華になっていくものもある。そのため各プレイヤーはこぞってバトルパスを購入し賞金規模が膨れ上がっていく。子どもたちもお金を使いたいと考えるような課金システムとなっている。

課金とは料金を支払うことである。支払方法を大別すると3種類ある。
・通話料・通信料・使用料などと合算され支払う(通信会社経由)。
・クレジットカードで支払い(クレジットカード会社経由)。
・プリペイドカードをコンビニエンスストアなどで購入して支払う。
 最初の二つの方法は、保護者が支払いをしている限り高額な金額であっても利用できてしまうという危険性がある。子どもが連想できないパスワードや暗証番号を設定することで高額な課金決済を防止することができる。
  最後の方法については、コンビニエンスストアなどでも簡単に購入できる。手持ちのお金の範囲内でしか買えないため、比較的大きな支払いにつながらず安全性が比較的高いと考えられる。保護者の監視のもと、ある程度課金も認める場合には、プリペイドカードを利用するという方法がある。
課金のトラブルは、「知らない間に財布からお金を盗られていた。」「パスワード設定を知らなかった。」「勝手にクレジットカードの番号を入力してしまっていた。」など保護者の知識不足や油断が原因であることが多いといわれている。まずは保護者が課金の方法、仕組みを理解し、子どもたちがトラブルに巻き込まれないようにすることが肝要である。

文献

  • ベネッセ教育情報サイト. スマホ課金, まず保護者が理解すべき「課金」の方法と仕組み.

https://benesse.jp/kyouiku/201509/20150930-10.html 2020年9月10日アクセス。

 

11) eスポーツとは

a) 概要
エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略で、競技性の高いゲームの事を指す。ゲームのジャンルは、格闘ゲーム、FPS、RTS、MOBAなど様々であるが、反射神経、瞬時の判断力、戦略などスポーツと同様な要素を含んでいる点は共通している。使用機器は、パソコン、家庭用ゲーム機、スマートフォンが含まれる。また、アミューズメント施設に設置された業務用ゲーム機を用いて行われる場合もある。 身体運動を伴う遊戯・競争を“スポーツ”と総称するが、マウス、キーボード、専用コントローラーといった手による操作に限定されるeスポーツを“スポーツ”と定義すべきかといった問題について、意見が交わされている。乗馬、アーチェリー、カーリングといった道具を用いたスポーツ種目は数多く存在し、スポーツにおける“身体運動”も明確な 定義ではないため、eスポーツの定義に係る議論は今後も続くことが予想される。 競技はネット上で動画配信される。コンサートのように観客の前で実際に選手が出場し、大画面スクリーンなどで演出される大会が人気となっている。一般のプロスポーツ選手を目指したり、好きなプロスポーツチームをの試合を観戦するには費用と時間を要する。eスポーツでは言語、文化、人種、身体的・社会的なハンディを超え、誰でも試合に競技者としてプレイができる。また観客者としていつでもどこでも多くのファンと共に観戦したり、応援して楽しめることができる。この点が多くの人を魅了しているといえる。以下は、eスポーツの特徴を分類したものである。具体例は大まかな理解の為に記載しているが、実際は一つのゲームに「バトルロワイヤル系」と「FPS/TPS」など複数の人気要素を組み合わせたゲームとなっている。

表)eスポーツの分類                            

ゲームジャンル 内容
スポーツゲーム系 サッカーなどリアルスポーツ競技をゲーム化
RTS (Real-time Strategy) リアルタイムの戦略ゲーム。将棋やチェスの様にプレイヤーが指示を軍勢のような複数のキャラクター(駒)を動かす。
FPS/TPS (First/Third Person shooter) 一(三)人称の視点の戦場を舞台とした銃撃戦ゲーム。
MOBA (Multiplayer online battle arena) RTSの手法で特定のキャラクターを操作し、味方と協力し敵チームの本拠地を破壊する。
バトルロワイヤル系 1つのフィールド内で、武器や環境を利用し、最後の一人として生き残ることを目指すゲームジャンル。

b) eスポーツの歴史
ゲームを用いた競技はゲームがアミューズメント施設や一般家庭に普及する以前から開催されている。古くは、1972 年にスタンフォード大学で計算機科学専攻の学生によって大会が開かれたといわれている。家庭用ゲーム機の任天堂社の「ファミリーコンピューター(国外での名称は Nintendo Entertainment System)」などがヒットし、ゲームのプレイヤーが飛躍的に増加に伴い、1990年頃から、ゲームのデベロッパー(開発企業)やパブリッシャー(販売企業)はプロモーションの一環として eスポーツ大会を 開催するようになった。人気のゲームからファンコミュニティを形成され、日本における e スポーツ産業の礎を築いた。1990 年末期から 2000 年以降、パソコンが一般家庭やインターネットカフェといった商業施設に普及し、パソコンゲームのプレイヤーが増加し、パソコンゲームを用いた eスポーツが“興行”として注目されるようになった。2000年以降、韓国、ドイツ、フランス、中国、イギリスといった国々で eスポーツを興行として行う企業・団体が次々と設立された。日本では 2000 年以降もパソコンゲームより家庭用ゲームやスマートフォンゲームのプレイヤーが多数を占めていたため、パソコンゲームを用いた eスポーツ興行の盛り上がりには追従していなかったが、2010 年以降に格闘ゲームジャンルのコミュニティからプロ選手が次々に誕 生し、プロ選手達が世界で開催される大会で活躍することで、興行としての eスポーツへの注目が集まるようになった。さらに近年では、一部の高等学校で部活動の一環として行われていたり、eスポーツ専攻の通信高校があるなど教育活動の一つとして行われている事例も散見される。

文献

  • 総務省情報流通行政局情報流通振興課. スポーツ産業に関する調査研究.

https://www.soumu.go.jp/main_content/000551535.pdfe 2021年10月アクセス

  • 望月拓実. 我が国に求められるeスポーツ研究:文献レビューによる検討. 国際研究論叢, 2021.

 

12) ネット・ゲーム依存の実態

総務省情報通信白書(令和2年版)※1によると、スマートフォン(スマホ)の情報通信機器の保有状況(世帯)は、2010年の9.7%から右肩上がりで上昇を続け、2019年にモバイル端末全体(96.1%)の内数で83.4%と初めて8割を超えた。個人のモバイル端末の保有状況は、スマホの保有者の割合が67.6%で、携帯電話・PHS(24.1%)よりも43.5ポイント高くなっている。同年の個人のインターネット利用率は79.8%で、端末別のインターネット利用率は、スマホが最も高く(59.5%)、PC(48.2%)を上回った。
一方、内閣府の青少年のインターネット利用環境実態調査(令和2年度)※2では、青少年のインターネットの一日平均使用時間は、青少年全体で205.4分であり、高校生男子が289.8分と最長、次いで高校生女子が245.1分であった。小学生(男子165.4分、女子127.5分)、中学生(男子212.1分、女子186.7分)とも、男子が女子より長時間となっている。青少年が利用するスマホコンテンツは、動画(81.7%)、SNSなどのコミュニケーション(80.0%)、ゲーム(70.6%)、音楽(70.2%)となっている。小学生に限ると動画視聴が最多(67.0%)、次にゲーム(62.9%)であった。
わが国の中高生の飲酒及び飲酒状況等について横断的に調査した厚生労働科学研究で、インターネットの過剰使用について調査し、2012年と比較して、2017年では、インターネットの病的使用が疑われる割合は中学、高校男女ともに上昇しており、中学男女計では12.4%、高校男女計では16.0%であり、この結果をもとにインターネット依存疑い者数を推計したところ、2012年52万人が2017年93万人へと増加していた。※3
久里浜医療センターが2019年10−29歳を対象に実施したネット・ゲーム使用と生活習慣についての調査によると、過去12ヶ月間に、85.0%(男性92.6%、女性77.4%)がゲームをしており、平日1日当たりのゲーム時間は、男性では3時間以上24.6%、女性では3時間以上10.4%で、概して男性のほうが長くなる傾向にあり、休日1日当たりのゲーム時間は、男女とも平日に比べて長くなっていた※4。さらに、10−79歳を対象にした調査では、今までにゲームをしたことのある者の割合は、男性67.0%、女性58.4%で、平日1日当たりのオンラインゲーム時間は、男性では、3時間以上が11.0%、ゲームをしていない44.2%、女性では、3時間以上5.9%、ゲームをしていない48.5%であった。休日1日当たりのゲーム時間は、男女とも平日に比べて長くなっていたが、オフラインゲーム時間は、平日、休日ともにオンラインゲーム時間に比べて短くなっていた※5。
インターネット・ゲーム依存の有病率に関する調査では、アジア6カ国(中国、香港、日本、韓国、マレーシア、フィリピン)12〜18歳5,366人の調査によると、インターネット依存は1.2-4.9%※6と報告されている。31カ国133の疫学調査のメタアナリシスによると、インターネット依存とゲーム障害の有病率はそれぞれ7.02%(95%信頼区間、6.09%–8.08%)と2.47%(95%信頼区間、1.46%–4.16%)であった※7。オンラインゲームに関する37の横断研究と13の縦断研究によると有病率、有病率は0.7-27.5%と幅がみられた※8。多くの研究では女性より男性、高齢者よりも若年者の方が高い傾向にあった。日本の調査では、ゲーム障害の推定有病率は、男性で7.6%(95%信頼区間; 6.6-8.7%)、女性で2.5%(1.9-3.2%)であり、合計有病率は5.1%(4.5-5.8%)であった※9。

文献
1.総務省. 総務省情報通信白書. https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/. (最終アクセス:2021年7月4日)
2. 内閣府. 青少年のインターネット利用環境実態調査. https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/net-jittai_list.html (2020). (最終アクセス:2021年7月4日)
3. 尾崎米厚. 飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究. (2017).
4. 国立病院機構久里浜医療センター. ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート結果. https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document15.pdf (2019).  (最終アクセス:2021年7月4日)
5.国立病院機構久里浜医療センター. 令和元年度ネット・ゲーム使用と生活習慣に関する実態調査概要10歳~79歳対象者に対する調査. https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document32.pdf (2021).  (最終アクセス:2021年7月4日)
6.Mak KK et al. Epidemiology of internet behaviors and addiction among adolescents in six Asian countries. Cyberpsychology, Behav. Soc. Netw. 17, 720–728 (2014).
7.Pan YC et al. Systematic review and meta-analysis of epidemiology of internet addiction. Neurosci. Biobehav. Rev. 118, 612–622 (2020).
8. Mihara S & Higuchi S. Cross-sectional and longitudinal epidemiological studies of Internet gaming disorder: A systematic review of the literature. Psychiatry Clin. Neurosci. 71, 425–444 (2017).
9. Higuchi S et al. Development and validation of a nine-item short screening test for ICD-11 gaming disorder (GAMES test) and estimation of the prevalence in the general young population. J Behav Addict, 2021.

13) 行動嗜癖について

行動嗜癖の分類

物質の摂取または行動の行き過ぎと、それが引き起こす問題が明確に存在する状態を依存または嗜癖と呼ぶ。依存の一番大きな括りは嗜癖である。その下に、物質依存(substance dependence)と行動嗜癖(behavioral addiction)が分類される。依存はアルコール依存のように物質に対する依存にのみ使われる用語である。嗜癖は医学用語としては、最近使用されなくなっている。今のところ、行動嗜癖と正式に認められているのは、ギャンブルとゲームであるが、このためにこの両者に対しては嗜癖ではなく障害という用語が使われている。しかし、嗜癖も障害も馴染みのうすい用語なので、一般的にはギャンブル・ゲーム依存と呼ばれているのが現状である。

ゲームが何故依存に分類されたか

それでは、何故ゲームやギャンブルが依存に分類されたのであろうか。まず、ゲーム障害の症状が物質依存の症状によく似ていることが挙げられる。物質依存を特徴づける特性、例えば、渇望(ゲームではとらわれ)、コントロール障害、禁断症状、物質中心の生活、物質摂取により問題が起きているが摂取継続、再発(物質摂取を一時中断しても、再開すればすぐに元の状態に戻る)等が、ゲーム障害にも同じように認められる。
さらに決定的だったのは、ゲーム障害に認められる認知障害や脳内の神経生物学的メカニズムが物質依存でも共通して認められることである1,2)。例えば、依存対象を連想させるCue(引き金)に対する過大な脳内の反応、前頭前野の機能低下や報酬に対する欠乏状態などは、物質依存と同じようにゲーム障害にも認められている。
さて、ゲーム障害が依存として疾病化されるメリットは何であろうか。一つは、予防、治療のターゲットが明らかになり、この分野の研究や対策の進展が期待されることである。また、ゲームに依存特性が明確なことから、物質依存で蓄積された予防対策や治療手法が適用されやすいことであろう。

他の行動嗜癖

既述の通り、行動嗜癖と正式に認められているのは、ギャンブルとゲームのみである。しかし、日常生活では、これ以外に非常に多くの「行動嗜癖もどき」を耳にする。ネット関係だけを見ても依存の種類が多い。たとえば、SNS、動画、掲示板などがある。その他、有名なところでは、買い物、セックス、食べ物、運動、仕事、中には、衝動制御障害に分類されている窃盗症を行動嗜癖に分類しているケースもある。いずれにしても、今後、行動嗜癖の新たな疾病化については、エビデンスをもとに慎重に行ってゆく必要がある。

文献
Saunders JB et al. Gaming disorder: its delineation as an important condition for diagnosis, management and prevention. J Behav Addict, 2017.
Fauth-Bühler M et al. Neurobiological correlates of internet gaming disorder: similarities to pathological gambling. Addict Behav, 2017.

 

14) ゲーム依存の診断

ゲーム依存の診断は、ICD-11のゲーム障害の診断基準に従って行われるのがよい。しかし、この基準が正式に使用されるのは、2022年の1月以降となる。従って、現時点では暫定的な診断となる。ICD-11のゲーム障害の基準を表1に示した。基準は全部で5項目からなり(1-Aから1-Dと2)、診断に際しては、そのすべてを満たす必要がある。ゲーム障害の診断基準を満たさないが、ゲームにより何らかの健康・社会問題が存在する場合、「危険なゲーム、hazardous gaming」とすることも可能かもしれない。この危険なゲームもICD-11に新たに収載された概念である。ただし、医学的エビデンスの蓄積が十分でないため、その詳細は今後の研究を待たねばならない。
 一方、米国精神医学会は、2013年にDSM-5で、「インターネットゲーム障害, Internet gaming disorder」の診断基準を公表している。この基準は9項目からなり、過去12ヵ月の間に5項目以上満たすとそのように診断される(表2)。しかし、この基準は予備的基準なので、現時点で正式に使用することはできない。
 さて、このゲーム障害とインターネットゲーム障害の関係はどのようになっているだろうか。既存の論文から、後者の方が前者より、診断の閾値が低い(より軽症の者も診断される)ことが示唆されている。特に、軽症な集団に適用した場合に、その差が大きく出てくるようである。しかし、当センター外来のように比較的重症な患者に使用した場合には、両者の診断が合致する傾向が高いようである3)。

表1. ゲーム障害の基準

1 持続的または再発性のゲーム行動パターン(オンラインまたはオフライン)で、以下の特徴を満たす。
  • A.ゲームのコントロール障害。
  • B.ほかの日常生活の関心事や日々の活動よりゲームを優先。
  • C.問題が起きているにも関わらず、ゲームを継続。
  • D.ゲーム行動パターンは重症で、個人、家族、社会、教育、職業やほかの重要な機能分野に著しい障害を引き起こしている。
2 ゲーム行動および他の症状が12ヵ月続いた場合に診断する。しかし、すべての特徴が存在しかつ重症な場合には、それより短くとも診断可能である。

表2. インターネットゲーム障害の診断基準

1 ネットゲームへのとらわれ(前のゲームプレイを考えるまたは、次のゲームプレイを楽しみにして待つ)。
2 ネットゲームができない時の離脱症状(イライラ感、不安、悲嘆など)。
3 以前に比べて、ネットゲーム時間を増やす必要。
4 ネットゲームのプレイをコントロールする不成功な試み。
5 ネットゲームを除いて以前の趣味や娯楽の興味の喪失。
6 心理社会的問題が起きていると知りながらネットゲームを継続。
7 ネットゲーム時間に関して、家族、治療者、他の人を騙す。
8 嫌な気分から逃れるため、または解消するためにネットゲームをする。
9 大切な人間関係、仕事、教育または職業上の機会をネットゲームのために、危うくした、または失った。

表1、2ともに筆者が診断基準を簡略化した。

文献
1) World Health Organization. ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics. https://icd.who.int/browse11/l-m/en (2020年11月アクセス),
2) American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Health Disorders, Fifth Edition (DSM-5). American Psychiatric Association, 2013.
3) Higuchi S et al. Application of the eleventh revision of the International Classification of Diseases gaming disorder criteria to treatment-seeking patients: Comparison with the fifth edition of the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Internet gaming disorder criteria. J Behav Addict, 2021.

 

15) ネット・ゲーム依存の症状

ゲーム障害では、ゲームを過剰にやりすぎてしまい、様々な問題が出現するが、それにもかかわらず、やりたいという衝動や誘惑を抑えることができない。以下のように、ネット・ゲーム依存に伴う様々な症状が報告されている1)。
・いらいら、怒り、倦怠といった気分の変化
・睡眠覚醒サイクルの乱れと睡眠の質の低下
・抑うつ、不安、自殺リスク
・身体的な不快感や痛みの問題
・体調不良
・質の悪い食生活とカフェインの過剰摂取
・現実の友人関係の喪失や社会的孤立
・家族との衝突
・別離や離婚
・仕事や生産性の破綻
・学生の長期欠席、ドロップアウト
・経済的な危機

文献
King D et al. Internet Gaming Disorder, Academic Press (樋口 進監訳. ゲーム障害. 福村出版, 東京, 2020).

16) ネット・ゲーム依存の合併症

インターネットやゲームの依存的使用では主に膨大な時間をインターネットやゲームに使用することによって多くの悪影響が出現する。問題点としては生活の乱れ、金銭的な問題、家族関係の悪化などがあるが、中でもインターネットやゲーム依存にはさまざま合併症が生じることが知られている。まず身体的な面においては長期間にわたって身体を動かさない生活を続けている方が多く、結果として筋力や骨密度の低下、肺機能の低下が見られ体力の低下を生じていることが多い。また長時間にわたってモニター画面を見続けている生活のため、眼精疲労や仮性近視などが多くの患者に認められる。
精神的な面においてはADHD(注意欠如多動性障害)やうつ病、強迫性障害、社会恐怖症などの合併率が高いと報告されている¹⁾²⁾。
これら精神疾患合併症の存在はインターネットやゲーム依存症を悪化させてしまう因子となることが多いが、中でも取り分けADHD傾向の合併はインターネットやゲーム依存との強い相関関係があると報告されており注意が必要である³⁾。

文献

1) Bozkurt H et al. Psychiat Clin Neurosci, 2013.

2) Tang J et al. Psychiat Clin Neurosci, 2014.

3) Yoo HJ et al. Psychiat Clin Neurosci, 2004.

 

17) ネット・ゲーム依存とひきこもり

インターネットやゲーム依存症の患者の多くは未成年者が占めている。インターネットやゲームに没頭している方の多くは日常生活を送ることに困難を生じてくる。具体的にはインターネットやゲームをすることによって多大な時間を浪費してしまうため彼ら彼女らが学生の場合、朝起きられない→学校に遅刻したり欠席することが多くなる→学業不振になったり学校での人間を失っていく、という問題が生じてくる。そして重症化すると完全に昼夜逆転の生活を送るようになり結果として長期欠席が続くようになる、といった状態に陥ることが多い。高校生や大学生の場合は中途退学になってしまうことも珍しくない。
このことは結果的に彼ら彼女らの健康問題や家庭における人間関係に大きな問題を生じるだけでは無く、その将来にも大きな禍根を残しかねない。
このような場合、ご両親も何もしていないわけでは無く、ゲームを止めさせようと色々と試みるが子供達は注意を無視し、場合によっては親に対して暴言や暴力行為に及ぶことすらある。よって多くの親は不本意ながら仕方なくなすがままになっているのが現状である。親自身に対しても何らかのケアが必要となるケースがよくみられる。既に子供たちが引きこもってインターネットやゲームに没頭している状態では、ルールなどを決めて強制的に止めさせようとしても上手くいくことは少ない。学校や医療機関、カウンセラーなど家族以外の第三者とも協力し、インターネットやゲームを使用する以外の充実した時間を作り出し、生活の質を徐々に向上させていくのが良いと考えられる。

 

18) 認知行動療法

出来事や物事に対する見方・捉え方を『認知』と言う。認知行動療法はそのような、人の『認知』に働きかけることで、自分の行動や感情、生活を改善しようとする心理療法である。特にうつ病に対して有効であるとされてきたが、現在は統合失調症、不安障害、PTSD、摂食障害、アルコール依存症、ギャンブル依存症、などの精神疾患の治療に応用されている。認知行動療法では、下図のようなモデルを用いて説明することがあるが、これは、人は出来事(A)に遭遇すると、信念(B)に基づいた見方で捉え、その結果として、(C)感情や行動が起きるというものである。

認知モデル
       
例えば『仕事でミスをした』という状況(A)で、ある人は『もう自分はダメだ』と考えが浮かび(B)、またある人は『一度ミスしたくらいがなんだ』と考えることがある。前者の場合は『抑うつ感』を強く感じ(C)、極端に言えば『仕事に行かない』という行動(C)に至る場合もある。一方で後者は『一時的に落ち込む』か『挽回しようと努力する』などの行動に至る可能性がある。このように同じような出来事に遭遇しても、その認知が異なるために、行動や感情も異なると考える。
認知行動療法では、様々な手法を用いて自身の認知の歪みや癖を見直し、より現実的でバランスのとれた捉え方や考え方を目指していく。そして、認知の歪みや癖のために、悪循環が起きているサイクルや、悪い習慣を見直すことで、行動変容をも目指していく。
 認知行動療法の手法は主に認知を扱う認知療法と、主に行動を扱う行動療法の2つに分けられるが、そのどちらも重要で、コインの表と裏のように、表裏一体の関係である1)。認知療法では、日常生活の細かいチェックのための宿題、非機能的思考記録表(コラム表)などがある。また、行動療法では、活動スケジュールの作成、達成感と快感の評価、段階的課題達成、ロールプレイなどがある。
様々な依存症治療にも応用されている中で、ネット依存症者に対して認知行動療法の理論に基づいた介入が試みられており、ネットやゲームへの考え方や行動の見直し、問題に対して具体的に対処していくためなどに活用されている2)。また、Young3)は、インターネット依存のための認知行動療法(CBT-IA:CBT for Internet Addiction)を用い、患者の95%以上が12週間の終わりに症状を管理でき、78%が治療後6か月で回復を持続できたことを報告している。久里浜医療センターでも、認知行動療法に基づいたプログラムを開発し、外来や入院患者にプログラムを実施している。また、治療キャンプ(セルフディスカバリーキャンプ, SDiC)でも、短期間の集中的なプログラムを行っている。

文献

1) 清水栄司. 認知行動療法のすべてがわかる本. 講談社, 東京, 2013.

2) 樋口進. ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本. 講談社, 東京, 2018.

3) Young KS. J Behav Addict, 2013.   

 

19) 薬物治療

インターネットやゲームを過度に使用している場合、生活のリズムが崩れており昼夜逆転した生活を送っていることは珍しくありません。患者が学生の場合だと夜更かししてゲームに没頭し、翌朝起きられず遅刻や欠席を繰り返し、そのまま不登校となってしまうのがよくみられるケースです。治療として睡眠と覚醒を整える必要があります。朝は早く起き、日光を浴び軽い運動等を行えば夜間の入眠が容易となるでしょう。その際に助けとなる内服薬がRamelteon(商品名:ロゼレム)です。人の脳に存在する睡眠ホルモンのメラトニンは人の体内時計を調節する役割を持っており、Ramelteonにはそのメラトニンの働きを増強させる作用があります。体内時計を整えることで本来の自然な眠りをもたらします。副作用や依存性も殆ど見られないため使いやすい薬ですが、未成年者に対する安全性は確立されていないため使用には慎重を要します。
またインターネットやゲーム依存症患者の中には他の精神疾患との合併がみられるケースがあります。うつ病、強迫性障害、社会恐怖症、躁うつ病などとの合併がみられると報告されていますが、中でも特に(注意欠如多動性障害)との合併が多くみられます¹⁾²⁾。そこでインターネットやゲーム依存患者の治療においては、ADHDの治療も並行して進める必要があることが多いです。ADHDの治療に用いる内服薬としてはAtomoxetine Hydrochloride(商品名:ストラテラ)、Guanfacine Hydrochloride(商品名:インチュニブ)、Methylphenidate Hydrochloride(商品名:コンサータ)があり、いずれもADHDの症状(衝動性の強さ、注意力の欠如、逆に特定の行動への異常な集中)を緩和する作用があります。その効果により、間接的にゲーム行動の改善に寄与することもあります。いすれにしても、これらの薬物の使用に際しては、主治医とよく相談の上、使用するようにして下さい。

文献

1) Bozkurt H et al. Psychiat Clin Neurosci, 2013.

2) Tang J et al. Psychiat Clin Neurosci, 2014.

 

20) 家族の問題

a) 過剰使用の背景にある家族の状況
過剰使用の家族の背景は様々である。具体的には、両親が多忙で子どもとの関わりが乏しい、家族間の繋がりが薄い、家族内で暴言・暴力が頻繁に見られ、自宅が安心安全な場所でないことなどがあげられる。また両親がインターネットやゲームなどに関する知識を持ち合わせていない、もしくは過度に好むため、子どものインターネット利用などを放任したり、推奨する状況もあげられる。両親が子どもの行動をコントロールすることができないことや過度に父性が欠如した状況も同様である。こうした状況下の子ども達は、インターネットの世界に自分の居場所を見出すなど、過剰使用に至っていく傾向が見られる。
b) 過剰使用が及ぼす家族への影響
子どもが過剰使用に至ると、身体面や生活面で様々な影響(体調不良・コミュニケーションがとれない・不登校・成績低下・浪費など)が出始める。子どもの健康や将来を懸念した両親は、時間制限の促しや叱責、デジタル機器の取り上げを行うが、改善されないことが多い。時には暴言や暴力を受けることもあり、子どもの性格の変化に驚きと恐怖感を抱く。中には子どもの反応に両親が感情的になり、暴言・暴力を振るう場合もある。こうして家族内不協和が常態化していく。
 両親は状況の改善のために周囲に相談しようと思うが、やはりこんな話をすることは恥ずかしいと両親のみで抱え続けるパターンもある。親族や友人に相談しても、子育ての方法について指摘を受けるなどして自信を失ったり、相談機関を利用したものの十分に気持ちを受け止めてもらえない経験を重ね、誰に相談しても理解してもらえないと次第に孤立感に苛まれていく。また近隣の子どもと比較して、ひどく不安や気分の落ち込みを感じることもある。ネガティブな感情が募っていき、社会生活を楽しむことができなくなったり、中には不眠や気分の落ち込みなど心の不調を訴える家族もいる。
 夫婦間で問題意識を共有化できない場合(例えば父親はデジタル機器の利用を推奨する一方で、母親は子どものデジタル機器の使用状況に懸念をいただく)、懸念を抱く保護者の孤立感や負担感が増す傾向が見られる。

文献

1) 樋口進. 心と体を蝕む「ネット依存」から子どもたちをどう守るのか. ミネルヴァ書房, 京都,  2017.

2) 樋口進. Q&Aでわかる子どものネット依存とゲーム障害. 少年写真新聞社, 東京, 2019.

 

21. 家族の対応

a) 対応の基本「声かけ」

ネット機器の安易な取り上げ、一方的なルール決めは、コミュニケーションの低下や暴力に通じる。本人に対して家族が意識的な変化を加えた友好的な「声かけ」は、家族間の関係性を高め、双方的な「対話」へ通じる。対話の積み重ねで相互の理解を深める。それは、行動変化への意欲が生じた機会を見逃さなくなる。現実的に達成可能なスモールステップ(ゴール)を一緒に設定し、目標達成に向けた言動・行動を適切に評価し続けることが回復につながる。しかし、回復までには年単位を要する時間がかかることが多い。

b)  家族は要支援者

回復のプロセスは「一歩進んで二歩下がる。」「一時的によくなったように見えて、また元の状態に戻った。(リラプス:再発)」を繰り返す。家族は、ネット依存から生じる昼夜逆転、不登校、暴力などにさらされ、不摂生な食事や保清、他の同胞への影響、将来などの不安を長期間に渡り抱えている。そのため短眠・不眠傾向、情緒の不安定、うつ傾向を有しやすい。その中で、根気強く、諦めないで関わり続けるために、家族自身が支援を受けることが大切である。

c) 家族会の活用

家族会は、本音を話しても責められない、安心できる場所である。本音を話すことで、傷つきながらもなおざりにしてしまっていた自身の気持ちに気づける。当センターは2011年12月より家族会を行っている。毎回のアンケートには共通して、他家族の具体的な対応例、自身の子どもよりも数歳年上の子どもを持つ家族の話を聴くことで「自分一人でなかった。」「自分のこれまでの対応は、決して責められるものではなかった。」「今は目に見える変化はないけど、希望はあるんだ。」「光が見えた。」などの感想が書かれている。対応に必要なモチベーションの維持と向上が得られる場である。

d) 第3者を介入させる

家族との関係性や良好なコミュニケーションを高めることが困難な場合は、第3者の介入が有効である。ネット依存に理解ある医療機関や相談機関の医師、カウンセラー、相談員、そこで知り合った友だちなどとの継続的な関りの中で、「自分もゲームのアカウントを削除した。」「バイトを始めようと思う。」「今からでもIT関係の専門学校に行こうと思う。」など行動変容していく。第三者としてペットと買った事例がある。本人は、ペットに毎朝、餌をあげるという現実的な役割を担うことで、必要とされている自尊心を回復した。医療・相談機関に限らず、本人が信頼していたり、本音を吐露できる第3者の介入は望ましい。本人を応援する支援者が多いほど回復は早い。

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