ギャンブル依存治療部門
概要
2011年7月のネット依存治療研究部門 (TIAR) を開設に続き、当センターでは、2013年6月よりギャンブル依存(正式にはギャンブル障害)治療研究部門を開設し治療を開始いたしました。
"ギャンブルの問題を持つ" ことは、長年にわたり個人の道徳的観念の欠如や意思の弱さが原因であるとされてきましたが、近年では、医学上の問題としての側面があることが知られてきています。
すでに国内外では、医学的治療や福祉的支援がギャンブルの問題に効果的であることが多数報告されています。
ギャンブルにより生じたトラブルの背景に、医学的にどのような問題があるのかを理解することは、トラブルの解決の手助けとなります。
当センターでは、ギャンブル依存治療を行うとともに、個々のケースに応じて地域の関連機関等と連携をとり、必要な支援 をご提案させていただくこともあります。
ギャンブル依存に関する研究と最新の治療情報収集にも取り組み、よりよい治療を提供いたします。
診療方針
当センターでは以下方針を掲げ、治療を行っています。
- 医学的視点にもとづく診療
- エビデンスにもとづく治療の提供
- 家族の相談にも応じる体制
- 研究や最新情報収集に取りくむ
これまで国内外で様々な治療法が試みられていますが、ギャンブル依存の治療には、行動療法や認知行動療法が有効とされています。
行動療法は、問題となる行動に体系的に暴露させ、ギャンブル衝動を抑える技術を学ぶ治療法です。
認知行動療法は、不健康で、不合理で、後ろ向きの考えを明確にし、それを健康的、合理的、前向きな考えに置き換えることに焦点を当てている治療法です。
うつ病や強迫性障害、ADHD等の精神疾患に対しては、症状に応じて抗うつ薬や気分安定薬などの薬物療法を行います。また、GA / ギャンブラーズアノニマスのような、ギャンブル問題を抱えている当事者と話し合う自助グループが有効な場合もあります。家族に対する家族療法も有効といわれています。
当センターでの診療と治療
当センターでの診療は、精神科医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士が連携して行います。
「問診」、「精神科医師による診察」、「臨床心理士による心理検査」、「身体検査」などを通じて、ギャンブル依存の診断や合併症の有無の確認を行い、治療を開始します。
治療は、認知行動療法を用いた治療・回復プログラムが中心となります。
プログラムは1回60~90分で、全6回で構成されています。個々の抱える問題への今後の適切な対応のあり方や注意点などについて学ぶことが出来ます。
プログラムと平行して、心理検査で性格傾向等についての分析や、精神科医師による診察、頭部MRI、採血、検尿、心電図などの身体検査を行います。
また、借金、就労、住居などの生活支援に関する事項については、精神保健福祉士が相談を承ります。
遠方の方や、症状等から外来通院が困難な場合は、入院治療も可能です。
当院では、入院期間は約9週間を基本とし、アルコール依存症治療の知見を取り入れた入院治療プログラムを提供します。
まず病棟で安静療養しながら、必要に応じて生活指導、服薬指導等を行い、これまでの生活を見直します。
認知行動療法を用いた治療・回復プログラムに加え、必要に応じて、怒りのコントロールを学ぶ「アンガーマネジメント」、「生活技能を学ぶSST」、「作業療法」、タバコやアルコールに関する問題がある人には「アルコール・タバコ勉強会」、「外出・外泊訓練」、「GAへの参加」を行います。
外来、入院治療とも、ご都合に合わせて治療スケジュールを組み立てますので、ご相談ください。
外来治療、入院治療を通して、
- ギャンブルへの衝動をコントロールする
- 経済的な問題を整理する
- 家族関係を修復する
- 人生をバランスよく送る
- ギャンブル以外のほかの問題にもうまく対処する
- 再発を防ぐ
ことを目標としています。
- あなたは大丈夫ですか? ギャンブルへののめり込み度チェック
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病的ギャンブリングへののめり込み度チェック項目
※アメリカ精神医学会の診断基準「精神疾患の分類と診断の手引き」第4版 (DSM-Ⅳ) 参考に作成。- ギャンブリングにとらわれている
- 興奮を得たいがために、掛け金の額を増やしてギャンブリングをしたい欲求が生じる
- ギャンブリングをするのを抑える、減らす、やめるなどの努力を繰り返し、成功しなかったことがある
- ギャンブリングをするのを減らしたり、またはやめたりすると落ち着かなくなる、またはいらいらする
- 問題から逃避する手段として、または不快な気分を解消する手段としてギャンブリングをする
- ギャンブリングで金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い
- ギャンブリングへののめり込みを隠すために、家族、治療者、またはそれ以外の人に嘘をつく
- ギャンブリングの資金を得るために、偽造、詐欺、窃盗、横領などの非合法的行為に手を染めたことがある
- ギャンブリングのために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらす、または失ったことがある
- ギャンブリングによって引き起こされた絶望的な経済状態を免れるために、他人に金を貸してくれるように頼ったことがある
※ 5個以上チェックがついた方は要注意です ※