IBS・便秘外来

機能性腹部膨満(ガス含む)

 ガスや腹部膨満で困られている患者さんは少なくありません。

 これまで病院を受診して採血や内視鏡などの画像検査をしても「異常」がなく、納得がいく説明が得られず、整腸剤や消泡剤を処方されてもよくならないことが多い病気です。

 ガスや腹部膨満で困る状況を「機能性腹部膨満」といいます。

 機能性腸症を司るRome委員会は「機能性腹部膨満」を「再発性の腹部膨満感または膨張」と定義しました。原則として他疾患の基準を満たさないものとされますが、IBSや機能性便秘など機能性腸症とのオーバーラップが多く診られる病気です。

 病態の多くはおなかの中のガスが増加することですが、腸内ガスの正常値は200ml程度とされます。 ガスの成分はその原因によって異なり、

1.窒素・酸素:「呑気」

2.水素・メタン:「腸内細菌による発酵」

3.炭酸ガス:「胃酸と重炭酸塩で発生」

となりますが、炭酸ガスは速やかに粘膜から吸収され、臨床上の問題は「呑気」と「発酵」です。

● 呑気は唾液嚥下に伴って飲み込む空気で、ストレスで唾液の嚥下が増えるため、ストレス疾患の意味合いがあります。昼から夜にかけて悪化するのが特徴です。

● 発酵は個人の腸内細菌の影響もありますが、来院される患者さんの多くは消化しにくい発酵性糖質であるFODMAPの消化吸収不良や脂質の消化不良から異常発酵が起きるケース、便秘による二次的な発酵が原因として多くを占めます。ストレス関連ではないため、休平日の差や日内変動はなく、食事の内容の影響を受けます。小腸に多くのガスが見られることが多いです。

 これらの知見から腹部X線と問診から機能性腹部膨満18名とIBSに伴う腹部膨満57名を検討したところ92%に呑気症、13%に発酵の関与が疑われ、3名では腸管ガスが認められず問診でも呑気症や発酵の関与が否定的で原因不明でした(JDDW2019)。

 2020年より腹部膨満外来を開設し、年間約100名の初診患者さんを診察しております。 呑気症であれば腹部X線でご自身のおなかの中を見ながら行う認知療法が非常に有効ですし、発酵の場合は便秘があれば便秘の治療、食事内容が問題であれば当院栄養科とコラボレーションして原因食物を特定して必要最小限の食事制限を行う取り組みを行っております。

 その後得られた知見は、呑気症も重症化すると小腸ガスが見られるようになり、来院時にガスがなく、呑気症も発酵も疑う所見がないケースでは姿勢や内臓の位置関係の問題があることがわかりました(第24回日本神経消化器病学会のシンポジウム:過敏性症候群基礎と臨床updateで発表「腹部X線と問診から病態を推測する機能性腹部膨満治療の試み」)。

腹部X線と問診からすると腹部膨満は以下の図のように解釈されます。

腹部X線と問診から見た腹部膨満


近年、メディアの影響などで小麦のグルテンの影響やSIBOを心配される患者さんがいらっしゃいます。

腹部X線と問診から行う診療に加えて、自費検査ではありますが麦に含まれるグルテン関連病態の「セリアック病の検査」やSIBOやFODMAPなどによる「発酵性下痢・消化不良下痢の乳糖負荷試験」を行えるよう整備しました。ご希望の方はお申し付けください。

腹部膨満やガスの原因がわかれば納得できますし、前向きに効果的な治療を選択できます。

お困りの患者さんをお待ちしております(初診は月曜午後、要電話予約)。

水上健

※受診日に症状がなくても、腹部X線や問診から困っていた病態を推測することができます。一時的な改善があっても初診日には受診されることをお勧めします。

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