過敏性腸症候群 (IBS)

このページは、過敏性腸症候群への当医療センターの取り組みを掲載しています。過敏性腸症候群に関する多様な情報をご覧いただけます。


日本小児心身医学会雑誌2019 vol.28 No.1 P41-45
「胆汁酸吸収不良BAMの関与が疑われる難治性下痢型IBS -小児症例と小児期発症成人症例の提示- 」
が発行されました。

過敏性腸症候群で悩まれている方へ

これまで過敏性腸症候群 (IBS) は特に心理的緊張 (試験や電車への乗車など) によって下痢・腹痛などの症状増悪を起こすことで知られる心療内科疾患の一つとされてきました。
 IBSは医学的には排便の性状変化と排便に疼痛を伴うことを特徴とする「機能性胃腸障害」の一つで国際的な診断基準RomeⅢでは以下のように定義されます。


Rome Ⅲ 基準* (2006)

    反復する腹痛または腹部不快感**が、最近の3ヶ月のうち少なくとも1ヶ月に3日以上存在して、しかもそれらの症状が以下の3つの2つ以上を伴うこと。

  • 症状が排便により軽快する。
  • 症状の発現が排便頻度の変化を伴う。
  • 症状の発現が便性状の変化を伴う。

* 症状は診断時より少なくとも6ヶ月以前に発現し、少なくとも最近の3ヶ月において診断基準を満たすこと。
** 病態生理の研究や治療では、スクリーニングの際に症状が州に2日以上存在すること。

[参照] 過敏性腸症候群 (中山書店);176-181.2006

IBSの病態は脳腸相関異常・消化管運動異常・知覚過敏とされてこれまで研究が進んできましたが、上記のRomeⅢ基準をみていただくと、その病態に重要であるはずの「心理的緊張」や「ストレス」の記載が全くないのに気付かれるかと思います。
つまり現時点では症状のきっかけとなるはずの「心理的緊張」や「ストレス」のあるなしにかかわらず、IBSが診断されているのです。


無麻酔大腸内視鏡(大腸鏡)挿入法「浸水法」検査で見えるIBS症状

IBS患者に無麻酔大腸内視鏡(大腸鏡)挿入法「浸水法」で鎮痙剤のみで検査を施行すると、

  1. IBS症状のきっかけとなる「心理的緊張」や「ストレス」を自覚する方に「鎮痙剤無効の腸管運動異常
  2. IBS症状のきっかけとなる「心理的緊張」や「ストレス」を自覚しない方に内視鏡検査が困難な「腸管形態異常

が高頻度に見いだされることを発見しました。

すなわち、「大腸検査自体のストレス」がIBS症状の契機に「心理的緊張」や「ストレス」を自覚する方にIBSの腹部症状の再現である「鎮痙剤無効の腸管運動異常」を引き起こして観察されると考えられます。(※上記1参照)

一方、IBS症状の契機に「心理的緊張」や「ストレス」がない方には腸管運動異常は観察されず、教科書的腸管形態と異なり内視鏡検査困難の原因となる「腸管形態異常」が高頻度で観察され、便通障害と排便時の疼痛を引き起こしていることがわかりました。(※上記2参照)

CTC画像 : 下行結腸の捻じれ症例

腸管形態異常は大腸検査直後の CT colonography (CTC) で患者さん自身も非常に理解しやすい形で客観的に評価することができるようになりました。
また、腸管形態異常型IBSで下痢型や混合型で下痢症状を有する方は腸の捻れの口側が拡張していることもわかりました (JDDW2011発表)
腸管の拡張と下痢症状は「便を緩くすることで通過障害をしのぐ」大腸自体の防御反応ではないかと考えております。 (これはS状結腸軸捻転症や腸閉塞の前にも観察される現象です。)

大腸内視鏡(大腸鏡)やCTCからはIBSの病態として「腸管運動異常型」と「腸管形態異常型」の2つが観察されているのです。

病態からみる治療方法

これまでIBSは一義的に下痢型にはイリボーRや抗不安薬や抗うつ薬、便秘型には緩下剤という治療がされていましたが、無麻酔大腸内視鏡 (大腸鏡) とCTCで病態が「腸管運動異常型」なのか「腸管形態異常型」なのかは容易に判断可能で、患者さんにもわかりやすく提示できます。

病態さえわかれば、

  • 腸管運動異常型」はストレスが関係するためイリボーRや抗不安薬、抗うつ薬
  • 腸管形態異常型」は "硬便の栓" を予防する少量の緩下剤と腸管の捻れを緩めるエクササイズ・マッサージ

など病態に応じた適切かつ効果的な治療を選択することが可能です。

その後の検討で、大腸検査で異常が全くないが「食事をすると下痢をして、食事をしないと下痢をしない」これまでの治療が無効である「胆汁性下痢」によるIBSがあることがわかりました。

これは、

  • 胆汁性下痢」は血液中のコレステロール値をみながら胆汁酸吸着薬の投与

で速やかに改善します。

もちろん大腸内視鏡(大腸鏡)で癌や炎症がないことを確認して安心するとともに、悩んでいた排便障害の原因を患者さん自身が内視鏡動画や腸管立体画像で認識・把握することをバイオフィードバックに用いると強力な治療ツールになります。

関連リンク

以下「診療手順のご案内」において、年齢層や、病気別の診療ロジックと治療期間の目安を随時ご紹介いたします。

当院の大腸内視鏡 (大腸鏡) は当院で開発し国内外で使用されている無麻酔大腸内視鏡 (大腸鏡) 挿入法「浸水法 Dig Endosc 19(1), 2007」で、安全かつ苦痛のない検査を提供いたします。
さらに「腸管形態異常型」など挿入困難な症例の大腸内視鏡 (大腸鏡) 検査を画期的に容易かつ苦痛をなくす先端柔軟大腸内視鏡 (大腸鏡) PQ260を使用しているので、これまで大腸内視鏡 (大腸鏡) 検査で苦痛が強かった方も楽に検査を受けることが可能です。

是非「ご自身の腸」を知ってご自身の腸とのよい付き合い方を見つけましょう。
IBSの方、腹痛を伴う便秘の方、特に検査で異常がないものの症状に苦しんでいる方や薬の効果が薄かった方のご受診をお待ちしております。


IBS・便秘外来 担当医師 : 水上 健



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