IBS・便秘外来

過敏性腸症候群 (IBS)

2024年10月16日 第62回全国大学保健管理研究集会で発表しました。
水上医師

「女子体育大学生における過敏性腸症候群IBSの病態と生活習慣の検討」
運動量が便秘型IBSの有病率を減らす一方で、試合などの強いストレスが下痢症状に影響することを報告しました。

水上健 医師の書籍が出版されます。2024年8月1日発売
「過敏性腸症候群(IBS)くり返す腹痛・下痢・便秘から脱出するには (健康ライブラリーイラスト版) 講談社」病名からでは分かりにくいIBSをその原因である病態から解説、治療の説明を行っています。

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過敏性腸症候群で悩まれている方へ

これまで過敏性腸症候群 (IBS) は特に心理的緊張 (試験や電車への乗車など) によって下痢・腹痛などの症状増悪を起こすことで知られる心療内科疾患の一つとされてきました。
IBSは医学的には排便の性状変化と排便に疼痛を伴うことを特徴とする「機能性胃腸障害」の一つで国際的な診断基準Rome Ⅳでは以下のように定義されます。


RomeⅣ 診断基準 (2016)

繰り返す腹痛が最近3カ月の中で、平均して1週間につき少なくとも1日以上

下記の2項目以上の特徴を示す。
1)排便に関連する。
2)排便頻度の変化に関連する。
3)便形状(外観)の変化に関連する。

※少なくとも診断の6カ月以上前に症状が出現し、最近3カ月間は基準を満たす必要がある。

中島淳,鳥居明,福土審:Medicina53(9)1308-1315,2016

IBSの病態は脳腸相関異常・消化管運動異常・知覚過敏とされてこれまで研究が進んできましたが、上記のRomeⅣ基準をみていただくと、その病態に重要であるはずの「心理的緊張」や「ストレス」の記載が全くないのに気付かれるかと思います。
つまり現時点では症状のきっかけとなるはずの「心理的緊張」や「ストレス」のあるなしにかかわらず、IBSが診断されているのです。


無麻酔大腸内視鏡(大腸鏡)挿入法「浸水法」検査で見えるIBS症状

IBS患者に無麻酔大腸内視鏡(大腸鏡)挿入法「浸水法」で鎮痙剤のみで検査を施行すると、

  1. IBS症状のきっかけとなる「心理的緊張」や「ストレス」を自覚する方に「鎮痙剤無効の腸管運動異常
  2. IBS症状のきっかけとなる「心理的緊張」や「ストレス」を自覚しない方に内視鏡検査が困難な「腸管形態異常

が高頻度に見いだされることを発見しました。

すなわち、「大腸検査自体のストレス」がIBS症状の契機に「心理的緊張」や「ストレス」を自覚する方にIBSの腹部症状の再現である「鎮痙剤無効の腸管運動異常」を引き起こして観察されると考えられます。(※上記1参照)

一方、IBS症状の契機に「心理的緊張」や「ストレス」がない方には腸管運動異常は観察されず、教科書的腸管形態と異なり内視鏡検査困難の原因となる「腸管形態異常」が高頻度で観察され、便通障害と排便時の疼痛を引き起こしていることがわかりました。(※上記2参照)

CTC画像 : 下行結腸の捻じれ症例

腸管形態異常は大腸検査直後の CT colonography (CTC) で患者さん自身も非常に理解しやすい形で客観的に評価することができるようになりました。
また、腸管形態異常型IBSで下痢型や混合型で下痢症状を有する方は腸の捻れの口側が拡張していることもわかりました (JDDW2011発表)
腸管の拡張と下痢症状は「便を緩くすることで通過障害をしのぐ」大腸自体の防御反応ではないかと考えております。 (これはS状結腸軸捻転症や腸閉塞の前にも観察される現象です。)

大腸内視鏡(大腸鏡)やCTCからはIBSの病態として「腸管運動異常型」と「腸管形態異常型」の2つが観察されているのです。

病態からみる治療方法

これまでIBSは一義的に下痢型にはイリボーRや抗不安薬や抗うつ薬、便秘型には緩下剤という治療がされていましたが、無麻酔大腸内視鏡 (大腸鏡) とCTCで病態が「腸管運動異常型」なのか「腸管形態異常型」なのかは容易に判断可能で、患者さんにもわかりやすく提示できます。

病態さえわかれば、

  • 腸管運動異常型」はご自身の腸との付き合い方へのアドバイスや認知療法が根本的な治療で、ストレスが関係するためイリボーRや抗不安薬、抗うつ薬が有効(当院では下痢型の50%を占めます)
  • 腸管形態異常型」は "硬便の栓" を予防する少量の緩下剤と腸管の捻れを緩めるエクササイズ・マッサージ、痛みが強い場合はリナクロチドやPEGが有効(腸管形態異常自体は9割以上が有しています)

など病態に応じた適切かつ効果的な治療を選択することが可能です。

その後の検討で、大腸検査で異常が全くないが「食事をすると下痢をして、食事をしないと下痢をしない」これまでの治療が無効である「胆汁性下痢 」によるIBSがあることがわかりました。(当院では下痢型の30%を占めます)。

これは、

  • 胆汁性下痢 」は血液中のコレステロール値をみながら胆汁酸吸着薬(※高コレステロール血症の適応)の投与

で速やかに改善します。

食事内容により下痢やガスが多くなるタイプがあります(当院では下痢型の5%、腹部膨満の10%を占めます)。小麦やネギ、リンゴなどの発酵性糖質FODMAPや脂質の消化吸収障害で腹部X線ではガスが充満しています。

  • 「FODMAP」は必要最小限の食事制限
  • 「脂質消化吸収障害」は膵臓や肝臓・胆のうの器質的疾患を除外してパンクレリパーゼの内服食事内容により下痢やガスが多くなるタイプがあります

で腹部X線で確認できるほど改善します。

もちろん大腸内視鏡(大腸鏡)で癌や炎症がないことを確認して安心するとともに、悩んでいた排便障害の原因を患者さん自身が内視鏡動画や腸管立体画像で認識・把握することをバイオフィードバックに用いると強力な治療ツールになります。

関連リンク

以下「診療手順のご案内」において、年齢層や、病気別の診療ロジックと治療期間の目安を随時ご紹介いたします。

当院の大腸内視鏡 (大腸鏡) は当院で開発し国内外で使用されている無麻酔大腸内視鏡 (大腸鏡) 挿入法「浸水法 Dig Endosc 19(1), 2007」で、安全かつ苦痛のない検査を提供いたします。
さらに「腸管形態異常型」など挿入困難な症例の大腸内視鏡 (大腸鏡) 検査を画期的に容易かつ苦痛をなくす先端柔軟大腸内視鏡 (大腸鏡) PQ260を使用しているので、これまで大腸内視鏡 (大腸鏡) 検査で苦痛が強かった方も楽に検査を受けることが可能です。

是非「ご自身の腸」を知ってご自身の腸とのよい付き合い方を見つけましょう。
IBSの方、腹痛を伴う便秘の方、特に検査で異常がないものの症状に苦しんでいる方や薬の効果が薄かった方のご受診をお待ちしております。


IBS・便秘外来 担当医師 : 水上 健



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