IBS・便秘外来

お知らせ

2024年10月16日 第62回全国大学保健管理研究集会で発表しました。
水上医師

「女子体育大学生における過敏性腸症候群IBSの病態と生活習慣の検討」
運動量が便秘型IBSの有病率を減らす一方で、試合などの強いストレスが下痢症状に影響することを報告しました。

水上健 医師の書籍が出版されます。2024年8月11日発刊
改訂新版 IBS(過敏性腸症候群)を治す本 法研
新しいガイドラインと新薬、食事療法を解説し、詳しい治療体験談を載せてあります。

初診枠を増枠しました。
現在初診予約は小児・成人で2週間以内、腹部膨満外来で1ケ月以内に取れるようになりました。当院は肺炎など急性期疾患を扱う医療機関ではありませんが、受診をご希望される患者様には感染防御を万全にして、来院途中もお気をつけていらしてください。発熱や感冒症状など体調が不安であれば、お気軽にお電話で初診日の変更をお申し付けください。

概要

当院、IBS・便秘外来は、「IBS」や「便秘」の方の腸管運動・腸管形態を評価して病態に応じた治療を行います。
これまで多くのIBSや便秘の患者さんの大腸内視鏡や、CTコロノグラフィーによる検討と腹部レントゲンとの整合を行うことで、問診と診察・腹部レントゲン所見だけでも病態の把握と治療が可能になりました。

過敏性腸症候群や便秘などの便通障害の方のご受診をお待ちしております。


  • ご注意:
    40歳以上の方で病歴が半年未満の方は「癌や炎症など」の重篤な疾患が症状を起こしている可能性があります。まずは近隣の医療機関を受診して「癌や炎症など」の器質的疾患がないことをご確認ください。
  • 放射線科Q&A検査における被ばく線量について

【 当院IBS・便秘外来診療実績 】

IBS・便秘外来の初診患者数を以下に示します。

初診患者数  (人) 2017年 2018年 2019年 2020年
小児 IBS 47 79 97 82
機能性便秘 103 211 165 41
成人 IBS 252 341 290 201
機能性便秘 207 147 163 170
全体 609 778 715 494

2020年はコロナ禍の影響で減りました(初診診察枠は年間約700名)。
2017年から2018年と倍増した小児機能性便秘患者さんは2018年末のPEG製剤の登場で減少しました。PEG製剤で改善しないお子さんが来院されているのが現状です。
小児IBS患者さんは従来治療が奏効しない患者さんが増えています(日本小児心身医学会雑誌2019年vol.28 No.1 P41-45、2020年vol. 29(1): P8-13に各々報告)。
成人患者さんは機能性便秘、IBSともに増加傾向です。2020年はコロナ禍の影響でストレス関連病態の患者さんが増えました。
特に目立つのが若年IBS患者で学業や仕事に支障を生じているケースです。
小児・若年患者では復学・復職までの期間短縮が重要で早期対処を心がけています。

診療方針 / 内容

IBSや便秘は他の疾患に比べても患者さんが非常に多く、生活の質に多大な影響を与える疾患ですが、命にかかわらないことから大腸検査に携わる医師が興味を持たない不幸な疾患でした。
そのためIBSや便秘は大腸検査で異常がない ( ≒ 腫瘍や炎症がない) ものとされ、患者さんが非常に多いのにもかかわらず他の疾患と比べて診断や治療の進化はとても遅いものでした。

当院は国内外のRCTで苦痛軽減効果が報告されている大腸内視鏡挿入法「浸水法」を開発しました。
複雑な腸管形態の方では検査自体が難しいとともに痛みを伴いがちでしたが、「先端柔軟大腸鏡」の「浸水法」による運用で無麻酔でも痛みがほとんどない検査が可能となりました。

麻酔をしない大腸内視鏡検査では検査中に患者さんとお話ができます。
検査中のお話というとどうしても便通関連のことになり、その時間は検査が難しければ難しいほど長くなります。
無麻酔で検査をしていたことで、これまで患者さんからIBSや便秘の内視鏡診断や治療へのヒントを多くいただきました。


  1.  内視鏡を入れるのが大変な人は便を出すのも大変
    検査を難しくしている「教科書と異なる複雑な腸管形態」が「ストレスの関与がないIBS患者」や「腹痛を伴う便秘患者」のほとんどに存在することがわかりました。
    また「ストレスが関係するIBSや便秘」の方では鎮痙剤が効かない腸の動きが内視鏡の挿入を阻害し、リラックスするとその腸の動きが消えることがわかりました。
    関連ページ:過敏性腸症候群 (IBS)

  2.  スポーツマンにIBSや便秘は少ない、が、スポーツをやめると多い
    複雑な腸管形態を持つ方であってもスポーツマンではIBSや便秘がほとんどなく、運動量が少ない人やスポーツをやめた人がIBSや便秘になっていること、スポーツの種類としてテニスやゴルフなど体を捻る運動が効果的で、一般に行われているウォーキングやジョギングは効果があまりないことがわかりました。

  3.  内視鏡を入れるときの工夫が便を出すときの工夫になる
    内視鏡を入れるときの工夫におなかを押す「腹部圧迫」があります。おなかを押して曲がった腸を抑えることで曲りを一時的に矯正して内視鏡を通りやすくする方法です。
    これを「ストレスが関与しないIBSや腹痛を伴う便秘患者」の方に試してもらったところとても効果があったと報告を多くいただき、内視鏡を入れるときの工夫が便を出す工夫になることがわかりました。
    関連ページ:ねじれ腸
     メディアの力① :「ねじれ腸マッサージ」の放映と反響
     「たけしのみんなの家庭の医学」で腹痛を伴う便秘の原因に日本人特有の腸管形態「ねじれ腸」があること、内視鏡を入れるときの工夫を応用した「ねじれ腸マッサージ」の報告をしました。
    放映直後からネットの反響はすさまじく、翌日には病院に「ものすごく便が出たのだが大丈夫か?」などの電話がありました。
  4.  「ねじれ腸マッサージ」放映後のIBS便秘外来の変化
    日本人の腸管形態は人それぞれで非常にバリエーションに富みます。一つの方法ですべてカバーするのはもちろん不可能で「ねじれ腸マッサージ」は約8割の方をターゲットにしたものでした。
    メディアの力はすさまじいものがありました。放映後にいらっしゃる患者さんは「マッサージが効果ありました」と教えに来てくれる人を除くとほとんどが「ねじれ腸マッサージ」の効果がない腸管形態「落下腸 (総腸間膜症) 」になってしまったのです。
    もともと腸管形態異常のうち「落下腸」は2割程度、その方たちが外来のほとんどを占めるような驚くべき事態になってしまったのです。
    関連ページ:落下腸
     メディアの力② :「落下腸マッサージ」の放映とその後
     あらたに「落下腸」の「腹痛を伴う便秘の方」を対象にした「落下腸マッサージ」が放映されました。今回も放映後のネットの反響もすさまじく、「ねじれ腸」より少ないとはいえ「落下腸」で腹痛を伴う便秘やIBSになっている方の多さに改めて気づかされました。
  5.  「落下腸マッサージ」放映後のIBS便秘外来の変化
    ただ驚いたことに久里浜の外来に来る患者さんは一時的に減ってしまいました。
    「マッサージが凄く効いた、これまで検査が痛くて大変だったので検査をしてほしい」といらっしゃる方たちを除くと「ねじれ腸マッサージ」「落下腸マッサージ」が効く方たちが来なくなってしまったのです。
    現在「ストレスが関与しないIBSや腹痛を伴う便秘」の方でいらっしゃる方たちは確かに「ねじれ腸マッサージ」や「落下腸マッサージ」が効きにくい特殊な腸管形態で形態に合わせたオーダーメードの方法を指導しております。

     メディアの力③ :従来の治療が効かない「ねじれ腸や落下腸以外」の便秘・IBS患者さんの来院
     「ねじれ腸マッサージ」「落下腸マッサージ」が効く方たちは減ってしまいましたが、TVや本などのメディアから当院を知っていただいた「ねじれ腸や落下腸以外」の便秘やIBSの方が多くいらっしゃるようになりました。

  6.  痛みがない便秘「機能性便秘」
    「ねじれ腸マッサージ」「落下腸マッサージ」が効く方たちが減った代わりに「痛みがない便秘」「機能性便秘」の方たちたちが増えました。
    当然のことですが「痛みがない」以上、マッサージやエクササイズはあまり効きません。
    「便秘のその他の原因」であるストレスや食事・生活・排便習慣、刺激性下剤の不適切な使用について考えさせられ、「便秘」の病態の複雑さ・難しさについて教えられるともに適正な指導で刺激性下剤はほとんどの方で減量・中止できることがわかってきました。
    関連ページ:慢性便秘症

  7.  便がない便秘「幻の便秘」
    これまでの治療が全く効かない患者さんの中には生活変化、ストレスなどで一日あたりにできる便の量が著しく減り、おなかの中の便が少なすぎるために便を出せない「幻の便秘」の方たちがいらっしゃることがわかりました。
    お腹の中は外から見えないというまさに盲点で、腹部X線でご自身のおなかの状態を認識することが一番の治療になることがわかりました。
    この方たちのほとんどは通過遅延便秘、いわゆる「痙攣性便秘」です。旅行中や忙しい時、緊張すると「ストレスが関係するIBSや便秘」でみられる鎮痙剤で抑制されない分節型腸管運動異常がでて、便を圧縮します。便秘を悩むこと自体すらストレスとなり、便の量が減る悪循環となります。
     メディアの力④ :
     たけしの家庭の医学で痙攣性便秘の方を対象に「電話で病態を説明するだけで便秘が改善する」という実験をしました。10日に1回の方は電話直後に排便があり、4日に1回排便があるようになりました。4日に1回の方も電話当日に排便があり、毎日排便があるようになりました。痙攣性便秘で悩む方への呼吸法を提示したところ、視聴者からTVの呼吸法ですっかり良くなったとのお手紙を頂きました。

  8.  新たなるIBSの原因「胆汁性下痢 (Bile Acid Malabsorption : BAM) 」
    ストレスが関与しないIBSの方では「胆汁性下痢(BAM)」の方たちが増えてきました。
    胆汁性下痢の方たちは病気としての絶対数が少ないため外来にはほとんどいらしていなかったのですが、メディアや本のおかげで来院される方が増えてきました。
    胆汁性下痢には現在とても有効な薬(※高コレステロール血症に適応)がありますが、「ねじれ腸」「落下腸」と合併していることが多く、薬とエクササイズを併せて指導しております
    関連ページ:過敏性腸症候群 (IBS)
     メディアの反響 : 小児患者の診療
     IBSや便秘は「腸管形態」や「ストレスに対する腸管運動」など生まれつきの体質です。
    実際に統計を取ったところ当院の成人患者の40%は16歳未満の小児期の発症でした。
    メディアや書籍からおなかの症状で苦しんでいるお子さんの受診が増えました。
  9.  小児患者の診断と治療
    最近は治療体験談やメディアを見てくださったご両親が小さなお子様を連れていらっしゃることが増えてきました。
    小児期から数十年も病気に悩まされている成人の治療がうまくいくのであれば発症まもない小児の患者はより容易なはずです。
    実際に成人に比べると驚くほどの回復力で、早期診断・早期治療の重要性を再認識させられました。
    2015年春には日本小児科学会総会で「成人治療の小児への応用」を報告しております。
    その後、思春期のみに存在する病態の診断と治療法を小児の学会に報告しております。
    関連ページ:小児排便障害治療への取り組み
  10.  ガス症状を含む機能性腹部膨満の診断と治療
    IBSの患者さんを含め、ガスや腹部膨満で悩む患者さんは多いことと思います。
    ガスや腹部膨満の原因は
    ①FODMAPや脂質の消化不良による小腸を含む腸内細菌による発酵でのガス産生と
    ②ストレス関連の呑気症、
    ③それ以外の生活習慣に関わるものがあります。
    当院ではIBSや便秘での診療手順を応用した腹部X線と問診を活用した診療を行っております。
    腹部X線と問診で原因が推測されれば
    1.当院栄養科と連携した必要最小限の食事制限による食事療法
    2.病態を理解させ、対処法をアドバイスする認知療法(必要最小限の薬を使うことがあります)
    3.腹部X線を用いた生活習慣改善指導など効果的な治療を選択できます。
    JDDW2019で「当院の機能性腹部膨満と腹部膨満症状を有するIBSの病態 ー腹部X線と問診による病態推測ー」を報告しています。
    ガス症状や腹部膨満は改善させることのできる病気です。
    お困りの患者さんをお待ちしております。

当院IBS・便秘外来は患者さんから教えていただいたことに真摯に取り組んで進化してきました。
今後も患者さんの声を真摯に受け止めIBSや便秘の効果的な診断・治療方法の開発と普及に鋭意取り組んでいきます。

診察手順のご紹介 -画像を用いた病態分類と治療-

当院は大腸鏡挿入法「浸水法」の開発過程で見出した過敏性腸症候群・慢性便秘症での内視鏡挿入困難の原因
 ① ストレス関連の「 腸管運動異常 」と
 ② 運動不足関連の「 腸管形態異常 」を
切り口に診療範囲を拡大してきました。

これまでの豊富な臨床経験から、「 腸管運動異常 」は問診から(電車で下痢、旅行中便秘など)高精度で推測できるようになり、 ② 腸管形態異常 はCTコロノグラフィーを用いなくても腹部X線からある程度推測が可能です。
近年、「 腸管運動異常 」や「 腸管形態異常 」は非常に有効な薬剤が出現したこともあって、ストレス管理や運動励行などの生活習慣改善と併せて非常に短期間で改善するようになりました。

次に見えてきたのが食事関連の病態 ③ 食事をすることで誘発される「 胆汁性下痢症 」でした。
脂質異常症を合併する「 胆汁性下痢症 」には陰イオン交換樹脂(※高コレステロール血症の適応)が奏功してすぐに正常の生活に戻ることができます。

「胆汁性下痢症」が解決して見えてきたのが ④ 食事内容で誘発される「 FODMAPや慢性膵炎を含めた消化不良症候群 」でした。乳製品や小麦、ネギ類やニンニクに代表されるFODMAPや慢性膵炎で起きる脂質の消化吸収障害が腸内細菌による発酵を引き起こし腹部膨満や下痢の症状を引き起こしていたのです。腹部X線では発酵の結果として小腸を含めて大量のガスが観察されます(ストレス性や胆汁性下痢症ではガスはありません)。
FODMAPでは食事内容の聴取から必要最小限の食事制限、慢性膵炎では画像検査を含めた膵機能の検査を行い消化酵素剤の補充により画像で評価できるほど改善することが分かってきました。

乳幼児に多い直腸性便秘の原因となる ⑤「 直腸肛門角 」の問題も臀部の観察からある程度推測できるようになりました。
すなわち画像検査と問診からみると過敏性腸症候群や慢性便秘症は分かりやすく、有効な薬剤と併せて治療が容易となりました。

ここでは年齢層や、病気別の診療ロジックと治療期間の目安を随時ご紹介いたします。

病院のご案内

▲このページの先頭へ