IBS・便秘外来
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ねじれ腸
腹痛を伴う便秘で悩まれている方へ
ねじれ腸について
「腹痛を伴う便秘」新たな原因の可能性 ●2012年4月10日 : みんなの家庭の医学3時間スペシャル●
4月10日のテレビ朝日「みんなの家庭の医学3時間スペシャル」で「腹痛を伴う便秘」の新たな原因として「ねじれ腸」の可能性をご報告しました。
「ねじれ腸」を疑う問診として
- 子供の頃から便秘だった
- 腹痛を伴う便秘になったことがある
- 便秘の後、下痢や軟便が出たことがある
- 運動量が減った途端便秘になったことがある
2つ以上該当すると腸がねじれている可能性があると提示しました。
「腹痛を伴う便秘」とは腸は動くものの便が出にくい (通りにくい) ため痛みを感じるものと考えられ、症状が
- 排便により軽快する
- 排便頻度の変化をともなう
- 便性状の変化を伴う
のいずれかを満たすことが多く、前記3項目のうち2項目を満たす「便秘型過敏性腸症候群」と多くの共通点を持ちます。
当院では「発症にストレスが関与しない過敏性腸症候群」では教科書的腸管と異なる腸管形態が多く見出されること、その多くが腸管形態に合わせたマッサージやエクササイズで改善すること (消化器心身医学 2010; 17 (1) : 33-39)を報告しております。
TV放映では教科書的腸管形態と異なる「腸管形態異常」をわかりやすく「ねじれ腸」と表現しました。しかし、残念ながら現在のところ腸管形態を評価する分類は存在しません。


私は慶應義塾大学解剖学教室の今西准教授と実際に献体30体の腸管形態を検討し、さらに排便障害の有る無し含め300以上のCTコロノグラフィーを検討しました。
ところが日本人の腸の形は100人100様で分類がないのも納得できる状況でした。
私は実際に100例以上の大腸内視鏡をドイツで施行しましたが、日本人と違って欧米人の腸管形態は教科書的腸管形態がほとんどでした。
腸管形態には明らかな人種差があります。
-
下行結腸のループ
-
下行結腸位置が中央
-
脾彎曲ループ,
S状結腸挙上
形態分類は困難なものの、「腹痛を伴う便秘」が有る方では
- 統計上有意に大腸内視鏡で盲腸に到達する時間が長く (検査困難)
- CTコロノグラフィーでは教科書的腸管形態と特に脾彎曲 (左胸の下)・下行結腸・S状結腸の3箇所が「ねじれて」異なり自覚する腹痛の部位と一致し
- 体をひねる運動を止めたことが発症契機で多い
ことがわかりました。
大腸内視鏡が、
- 「ねじれ」部位を通過するときに症状と同様の疼痛を自覚すること
- 「ねじれ」部位の内視鏡通過に腹部の圧迫が有効であること
- 発症契機に運動量低下が多いこと
からヒントを得て「ねじれ腸マッサージ」を考案したところ、従来治療の効果がなかった「腹痛を伴う便秘」の方の症状が著しく改善したというのが今回の放映内容です。
皆さまへのお願い
- 腸管形態分類は現在のところ存在せず、「ねじれ腸」は教科書に記載されていません。したがって患者さんが医療機関で「自分はねじれ腸ですか? 」と聞かれても、現時点で医療機関での対応は困難です。
- 「腹痛を伴う便秘」で「ねじれ腸問診でねじれ腸が疑われた方」は番組で提示したマッサージの効果が期待できます。注意事項 (腹部疾患・腰痛がないこと、妊娠していないこと) を確認の上、マッサージを試してみてください。
- 「腹痛を伴わない便秘」は腸の動き自体が悪いことが多くマッサージの効果はあまり期待できません。従来の治療や生活習慣の改善が重要です。
- 便秘の原因には腸の捻れだけではなく大腸・直腸癌や腸の炎症もあります。血便や最近起きた腹痛、体重減少がある方、40歳以上の方は大腸検査を含めて一度医療機関を受診してください。
「ねじれ腸マッサージ」の効果と反響
テレビで放映されてからいろいろな大きな反響をいただきました。
私が専門とするのは過敏性腸症候群 (IBS)です。
ただ、「症状の発現にストレスの関与がないIBS」は現状では「腹痛がある便秘」ととらえられています。
そのため番組では一般にわかりやすいように「腹痛がある便秘」がテーマとなりました。
ストレスの関与がないIBSと便秘の区別は困難で、同一の場合もあります。
番組で出演された5名は「ねじれ腸問診」を2項目以上満たし症状は「腹痛がある便秘」ですが、RomeIVという国際診断基準からは「IBS」と診断されます。
CTコロノグラフィーでは5名中4名が番組でご提示したように実際に腸管形態が「ねじれて」いました。
以下に、番組で出演された方のCTコロノグラフィーとマッサージ前後のレントゲンを示します。
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左胸下の2ループ
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マッサージ前 (立位)
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マッサージ後 (立位)
S状結腸の曲りも強いですが、横行結腸と下行結腸のつなぎ目 (画面右上) に2つのループがあります。
レントゲンは立った状態でマッサージ前後に撮影されています。
ガスは黒く見え便は少し白く見えます。わかりやすくするため便を青でトレースしました。
マッサージ前は、上行結腸と横行結腸が拡張し骨盤へと下垂しています。
マッサージ後は、便の量が著しく減少し、横行結腸が持ち上がり別人の腸のようです。
放送後すぐ病院にマッサージが著効したとのご報告を多数いただきました。
ねじれ腸に関連するネットやブログでも「ねじれ腸問診」を満たす方には非常に有効で、
- いろいろな薬は効かなかったがマッサージでスムーズに出た
- マッサージをやめると出ないが、再開すると出る
- 長い期間やっても効果が持続する
- 親娘 (おやこ) で翌日に出た
というご報告は、
- マッサージと薬とは便秘改善のメカニズムが異なる
- マッサージの効果には再現性がある
- マッサージは長期間にわたり効果が持続する
- 外来に来られる方以外でも腸の形が似ている親子が多くいる
という私の理論の裏付けになるもので番組のおかげで貴重な事実を知ることができました。
かく言う私自身も、「ねじれ腸問診」 の 2と3と4を満たす「ねじれ腸」なのですが、運動不足になるとおなかが張って痛くなります。
自分自身で「ねじれ腸マッサージ」をしていますが、トイレがつまるくらい大量の便が出て体重が2kgも減ったことがあります。
ただ、便秘にはご存じのとおり様々な要因が存在します。
急激な腹痛や血便、体重減少がある方は医療機関を受診すべきですし、便秘専門外来などでこれまで適切に治療されている方は主治医の先生を信頼して治療継続されることをお勧めします。
- 「ねじれ腸問診」を満たす「ストレスの自覚のないIBS」や「腹痛がある便秘」の方にはねじれ腸マッサージの効果が期待できます。
- 日本人の腸の形は多種多様です。ほとんどをカバーするようにマッサージを設定していますが、特殊な腸管形態の場合は大腸検査をして適切なマッサージ法を指導いたします。
※ 腹部疾患がある方や妊娠中の方は主治医の先生と御相談ください。
「ご自身の腸」を知ってご自身の腸とのよい付き合い方を見つけましょう。
従来治療が無効の「過敏性腸症候群」や「腹痛を伴う便秘」の方のご受診をお待ちしております。
IBS・便秘外来 担当医師 : 水上 健
- 初診 (要予約) : 【成人】水曜午前中、【小児】木曜午前中
- 再診 : 月曜・金曜
すでに予約を取られて2ヶ月以上の待ち時間がある方はご連絡いただけると短縮できる場合があります。
学業や仕事に支障が出ている方は早く診察しますのでご予約の際にお伝えください。
(普段通りの状態でレントゲンを撮らせていただけると、現在悩んでいる症状の原因を推測できます。診察前日は下剤を飲まないでいらしてください。)