小児排便障害治療への取り組み

このページは、小児排便障害治療への当医療センターの取り組みを掲載しています。小児排便障害治療に関する多様な情報をご覧いただけます。

12月第4週に冬休み小児特別外来を開設しました。
休み中でないと受診が難しい小児の患者さんをお待ちしております。

第46回日本小児消化器肝臓栄養学会で発表しました。
「乳幼児便秘のdisimpaction後の維持療法におけるPEG4000の有用性」

  • 乳幼児便秘の治療におけるポリエチレングリコールの有効性と使用上の注意について報告しました。

※その他学会報告のアーカイブは、こちらでご覧いただけます。IBS/便秘関連学会活動報告


最近は全国から小児の排便障害患者さんがいらっしゃるようになりました。

当院ではこれまでIBSや便秘などの排便障害を無麻酔大腸内視鏡やCTコロノグラフィーで病態を分析して、病態に応じた治療を行ってきました。
多くの症例を経験して分析することにより、症状発現の契機となるストレスの「心当たり」を聴取することで病態にストレスが関連するか高い確度で診断可能となり、内視鏡やCTを行わなくても腹部X線画像を読影することで腸管形態を推測することが可能となりました。

下痢型IBSなどのストレス関連の腸管運動異常には病態認識によるバイオフィードバックを含めた認知療法を用いることでラモセトロンやタンドスピロンなどの内服治療の効果を著しく高めることが可能です。
ガスで悩む子供にストレスで生唾を呑みこむときに空気も呑みこんでしまう呑気症が多く、認知療法が有効なこともわかってきました。

混合型や便秘型IBSに多い腸管形態異常には小児では、保険適応になるオリゴ糖を用いた便性状のコントロールと腹部X線で推測された腸管形態に応じたエクササイズや腹部マッサージの指導で良好な結果を得られるようになりました。

これまで数々の学会や論文で報告しておりますが、成人の重度の排便障害の多くは生まれつきの体質のようです。以下リンクの「治療・検査体験記」で確認していただけますが、体験談を寄せていただいた方は全員幼少時から症状に悩まれていました。

重度の排便障害は生まれつきのことが多く、幼少時から悩んでいた成人の患者さんを治せるのであれば病悩期間の短い小児であればより容易に治せることになります。

小児での症例の診断と治療過程を提示します。

症例の診断と治療過程

1. 下痢と腹痛で悩んで来院された中学生男子

中学校に進学したころから下痢症状と腹痛で悩むようになりました。
下痢症状が出るのは学校のみでストレスの「心当たり」があります。
前のクリニックでイリボー (ラモセトロン) を投与されましたが、下痢は収まるものの逆に便秘になって腹痛が悪化するため内服もできず困って来院されました。

おなかのX線写真を提示します。

下痢と腹痛で悩んで来院された中学生男子の腹部X線

下痢の患者さんと思えないほど便が溜まっているのと同時に、仰向けから立ち上がることで体の左に位置する下行結腸が骨盤の方に落ち込むのがわかります。
ストレスの「心当たり」があるので腸管運動異常と、下行結腸の固定不良による腸管形態異常が病態と考えました。
ラモセトロンは非常に強力で有効な薬ですが、腸管形態異常がある運動不足の状態では逆に便秘と腹痛を引き起こすことがあります。

ストレスに反応して腸が動きやすい体質であること、運動不足になると便秘になりやすい体質であることを病態として理解する認知療法を行い、エクササイズやマッサージをしながらラモセトロンを内服することで下痢や腹痛は速やかに消失し、緊張することが予測される日のみ薬を内服するだけでよくなりました。

腹部X線と問診だけで腸管運動異常と腸管形態異常の2つが病態としてあることが判明し、病態に合わせた治療で速やかに改善し、体質を克服した一例です。


2. 生まれつき1週間から10日間便通がない9歳男児

排便習慣と排便姿勢の問題で直腸性便秘になっておなかは便でいっぱいになっていました。
生活習慣と排便姿勢の指導をすることで、翌日から毎日排便ができるようになり、10日後のレントゲンでは著しく便が減っていることが確認できます。

下痢と腹痛で悩んで来院された中学生男子の腹部X線 (左) 直腸性便秘治療前   (右) 直腸性便秘治療後

成人でも職場でのトイレの我慢や、高齢での体力の低下やおしりのトラブルでトイレから足が遠のくことで起きますが、特に乳幼児に多いのがこのタイプの直腸性便秘です。
トイレトレーニングや食事移行期、通学開始の時期に起こりやすく、「小児慢性機能性便秘症ガイドライン」で明確な診断と治療のフローチャートが提示されています。
小児で直腸性便秘になりやすいのはおしりが洋式トイレに合っていないタイプの子が多いようで、足台などを用いた排便姿勢を指導すると回復も早く再発が抑制されるようです。

小児排便障害でお悩みの皆さまへ

小児は大人と違って体が小さいため腹部X線だけでも容易に腸管形態を把握できます。
病悩期間が短いこともあり認知療法が非常に有効で、生活指導に順応しやすく、スポーツを取り入れるのが容易なことから大人よりびっくりするほど回復が早いのが特徴です。

特にストレスが原因の腸管運動異常型IBSでは体質自体は変わらないのですが、体質とうまく付き合えるようになる「病気の卒業」が可能で、体質を理解することでご自身の腸とうまく付き合えるようになるようです。

お子さんの1日1日は大人の1日1日とは全く違う、非常に大切な時間です。
小児の排便障害の治療を始めるようになって、幼少時からずっと長いこと下痢や便秘、腹痛で悩まされていた成人の患者さんたちの辛かったであろう日々を思うと、この方たちを小さいころに治せていたらと心から思います。
早期に病態を把握して、ご自身の腸とうまく付き合う方法を見つけて楽しい日々を送りましょう。

便秘や過敏性腸症候群で困っているお子さんをお待ちしております。

初診は予約制ですので病院内科外来に電話予約をお願いいたします。
(小児の予約は極力お待たせしないようにしております)



  • お待たせしていた初診外来を増枠しました。
    すでに予約を取られて2ヶ月以上の待ち時間がある方はご連絡いただけると短縮できる場合があります。
    学業や仕事に支障が出ている方は早く診察しますのでご予約の際にお伝えください。
  • これまで医療機関を受診されている方は検査結果を持参していただけると効率よく診察できます。
  • これまでの多くの経験から来院時のレントゲンだけでも腸管形態の評価が可能になりました。
    (普段通りの状態でレントゲンを撮らせていただけると、現在悩んでいる症状の原因を推測できます。診察前日は下剤を飲まないでいらしてください。)
  • レントゲンを診て必要があれば大腸内視鏡検査・CTコロノグラフィーを予定いたします。
  • 最初から大腸内視鏡検査やCTコロノグラフィーをご希望の方は「大腸内視鏡検査の予約」をお願いいたします。
  • 65歳以上の方は身体疾患を考慮する必要があるため、紹介状をお願いいたします。
  • 20歳未満の方、学業や仕事に支障が出ている方は早く診察しますのでお伝えください

水上 健

病院のご案内

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