慢性便秘症
このページは、慢性便秘症への当医療センターの取り組みを掲載しています。慢性便秘症に関する多様な情報をご覧いただけます。
刺激性下剤の使用について
センナや大黄やアロエなどの生薬、そしてピサコジルやピコスルファートなどの下剤は大腸に到達して大蠕動を起こし排便を起こす「刺激性下剤」に分類されます。
「刺激性下剤」は旅行中や季節の変化、運動量の低下、女性の生理前などで起きる急性便秘の薬であり、とても重要で有用な薬です。
また急性便秘の薬であるため海外では慢性便秘に毎日内服する使い方はしません。
ところで慢性便秘の原因は
- 便性状の問題「硬い便」 : 食物繊維や水分摂取の低下
- 自律神経のみだれ : 不規則な生活や寝たきり状態、糖尿病など
- 精神的・身体的ストレス : 大腸がストレスで痙攣して便を排泄できない状態
- 弛緩性便秘 : 大腸の運動が低下して便を排出できない状態
- 直腸性便秘 : 排便を我慢することを繰り返すうちに、直腸が鈍感になり便を出せない
- 薬剤の副作用 : 大腸運動の抑制や便を固くするため。
- 「ねじれた腸管」による運動不足での便通障害 : 内視鏡が入りにくい人は、便も出にくい
などであり、お分かりになるかと思いますが「刺激性下剤」はこれら1 ~ 7の原因を改善するわけではありません。すなわち「刺激性下剤」は慢性便秘の治療薬ではないのです。
刺激性下剤の正しい活用方法
「便秘で " (刺激性) 下剤"を毎日長期間連用するとだんだん薬が効かなる」というのはとてもよく聞かれることです。
長期間「刺激性下剤」で毎日無理やり大蠕動を起こさせると大腸が疲弊して腸管神経叢がダメージを受けて大腸が動かなくなる「弛緩性便秘」に移行して下剤の効果が低下するのです。
便の量は食事量・食事内容・体質で大きく異なります。そのためもあって便秘の定義はおおまかに「排便が週3回未満のもの」とされています。
便が週3回出ればよいのであれば「刺激性下剤」を毎日飲んで毎日出すことにこだわるのは便秘の定義からしても矛盾することになります。
慢性便秘であれば、便性状を改善する食事や運動を含めた生活・ストレス管理といった慢性便秘の原因治療を行い、それでも出なければ週に1-2回「刺激性下剤」を使って腸管をリフレッシュするというのが「刺激性下剤」の正しい活用方法です。
ここで特に注意が必要なのは、長期間毎日の「刺激性下剤」使用で弛緩性便秘になっている方は、いきなり「刺激性下剤」を中止すると本当に便が出なくなることです。
当院のこれまでの治療経験からは、下剤がなければ排便できなくなった弛緩性便秘の方でも週に2回程度「刺激性下剤」の力を借りて排便させ、内服していない週5日間大腸を休めることで、時間はかかりますが「刺激性下剤」なしで自力で排便ができるようになることを確認しております (数十年の内服歴、70代以上の方では1年近くを要するようです)。
物のたとえですが、「水分摂取が重要で、1日1.5Lから2L摂取するように」とはよく聞くことです。
ただ、体に重要不可欠な水分とはいえ、1日に6-10L飲むと体の中の塩分バランスが崩れ「水中毒」という命に係わる事態となります。
体にどんなにいいものであっても摂り過ぎは禁物で、適量の適切な摂取が重要です。
「刺激性下剤」はとても重要で有用な「急性便秘」の薬です。
「刺激性下剤」を使うことはいけないことではなく、適正量を週に1-2回までを目安に症状に応じて服用することが重要です。
関連リンク
こちらから参考資料として「画像検査からみた便秘の病態」 をご覧いただけます。
以下「診療手順のご案内」において、年齢層や、病気別の診療ロジックと治療期間の目安を随時ご紹介いたします。
「ご自身の腸」を知ってご自身の腸とのよい付き合い方を見つけましょう。
検査で異常がないものの排便障害に苦しんでいる方、特に従来の薬の効果が薄かった方のご受診をお待ちしております。
IBS・便秘外来 担当医師 : 水上 健
- 初診 (要予約) : 【成人】水曜午前中、【小児】木曜午前中
- 再診 : 月曜・金曜
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学業や仕事に支障が出ている方は早く診察しますのでご予約の際にお伝えください。
(普段通りの状態でレントゲンを撮らせていただけると、現在悩んでいる症状の原因を推測できます。診察前日は下剤を飲まないでいらしてください。)